研究課題/領域番号 |
16K09220
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
島田 亮 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10376725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | β-ガラクトシダーゼ / p16 / p21 |
研究実績の概要 |
脳外傷による脳機能障害のメカニズムの解明は、法医学、病理学の実務上非常に重要である。我々は老化細胞のマーカー「老化関連ベータガラクトシダーゼ」(以下β-gal)を基質 X-gal で染色し、損傷部位直下深部が特異的に染まることを実証した。よってβ-galが脳損傷の診断マーカーとして有用と見込まれる。しかし、脳損傷がなぜβ-galを活性化するかは今までに研究報告がなく、そのメカニズムはわかっていない。我々は細胞老化 Pathwayの細胞周期に関する遺伝子の発現を解析し、そのメカニズムを解明したい。 1.動物実験。①Impact Deviceを用いて、マウスの外傷性脳損傷を作製。損傷後1日、4日、1週間、2週間の処置群とSham群をそれぞれ作製する。何も処置しない群をコントロール群とする。②行動学解析はNeurobehavioral testを行った。③サンプルの処理は脳損傷後所定時間にマウスを深麻酔下、緩衝液を灌流し安楽死させ、4%パラホルムアルデヒド(PFA)灌流固定、脳を摘出し、OCTコンバウンドで包埋、薄切して切片標本を作製。 2.発現解析。①酸性β-ガラクトシダーゼ測定キットを用いてβ-galを染色し、ImageJを用いて半定量解析した。結果、脳損傷マウスでは大脳の損傷側に損傷後4日目にβ-galの発現が増加し、7日目に発現はピークとなり、14日目に発現は減少した。②免疫組織化学法で、細胞老化 Pathwayの細胞周期を抑制するタンパクp16、p21の抗体を用いて、脳組織に発現を解析した。結果、損傷後4、7、14日目に細胞周期を抑制し、細胞が老化した時に発現が増加するp16が損傷群損傷側のアストロサイトに発現した。損傷後1、4、7、14日目に細胞周期を抑制し、細胞老化を媒介すると機能があるp21が損傷群損傷側のニューロン、マイクログリアに発現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験及び発現解析の酸性β-ガラクトシダーゼ測定キットを用いて老化関連ベータガラクトシダーゼを染色し予定通り行った。さらに、ImageJを用いて老化関連ベータガラクトシダーゼ発現を半定量解析したことは予想以上に成果を得られたと判断。 免疫組織化学法で、細胞老化 Pathwayの細胞周期を抑制するタンパクp16、p21の抗体を用いて、脳組織に発現を解析するにあたり、当初の計画では2年目以降行う予定だったが、酸性β-ガラクトシダーゼの発現領域を特定すると共に、実験をスムーズに進展させるため、その領域に細胞老化Pathwayの細胞周期に関する遺伝子の発現を解析した。まだ、終わっていないが、ある程度の結果が得られたので、おおむね順調に進展していると判断。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、免疫組織化学法で、細胞老化 Pathwayの細胞周期に関するタンパクの発現を解析する。 さらに、免疫組織化学法で得られた結果が正確か否か確認するため、二次スクリーニングを行う。 1.動物実験①外傷性脳損傷モデルマウスの作製について、Impact Deviceを用いて、マウスの脳損傷を作製。損傷後1日、4日、1週間、2週間の処置群とSham群をそれぞれ作製する。何も処置しない群をコントロール群とする。②行動学解析について、外傷性脳損傷を作製前後、以下の行動解析を行う。a. Exit circle test; b. Beam walk; c. Capture and handling test③サンプルの処理について、脳損傷後所定時間に、マウスを深麻酔下、緩衝液を灌流し安楽死させる。それぞれRNA抽出及びタンパク抽出のため処理し、そのサンプルを-80℃保存する。 2.mRNAの発現解析。酸性β-ガラクトシダーゼ測定キットで発色した脳のエリアと同じ部分(別の動物)から抽出したRNAを用いてRealtime PCRを行う。Applied Biosystems のキットを用いて、cDNAへ逆転写し、Applied Biosystems StepOnePlusリアルタイムPCRシステムを利用して定量解析を行う。解析する遺伝子は老化細胞Pathwayの細胞周期に関する遺伝子。 3.タンパクの発現解析。酸性β-ガラクトシダーゼ測定キットで発色した脳のエリアと同じ部分(別の動物)から抽出したタンパクを用いてWestern blotを行う。Invitrogen のNuPAGE キットを用いて、電気泳動、PVDF membraneへトランスファーし、免疫発色を行う。結果をイメージングで画像を取り、定量解析を行う。解析するタンパクは老化細胞Pathwayの細胞周期に関するタンパク。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度で、免疫組織化学法で使用する抗体が高額なため、前倒しで支払請求した。少し余ったので、最初の予定通り、29年度で使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、免疫組織化学法で、細胞老化 Pathwayの細胞周期に関するタンパクの発現を解析する。 さらに、免疫組織化学法で得られた結果が正確か否か確認するため、二次スクリーニングを行う。①RNA及びタンパク抽出するために、新たに動物実験を行う。②Realtime PCR 法を用いて、遺伝子は老化細胞Pathwayの細胞周期に関する遺伝子のmRNAの発現を解析。③Western blot法を用いて、老化細胞Pathwayの細胞周期に関するタンパクの発現を解析。
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