研究課題
心肺蘇生術を施行された事例の剖検や死亡時画像診断では、心嚢破裂の所見を認めることがある。従来これは胸部圧迫に伴う胸骨肋骨骨折による二次的な損傷と考えられていた。本研究では、コンピューターシミュレーションによって急速心タンポナーデ下で胸部圧迫時に心嚢に加わる力学導帯を解析し、心嚢破裂発生機序を明らかにすることを目的としている。カニクイザルを用いて心臓カテーテル法にて人工的に心タンポナーデモデルを作成した後、得られた画像データを元に2次元FEM解析モデルの作成を行い、コンピューターシミュレーションプログラムADINAを用いて心嚢にかかる歳代応力の部位・向き・大きさなどを解析した。メッシュの形成は胸部CTスキャンデータから、2次元のFEM解析を行うにあたり、平面ひずみ状態であることを仮定し、4角形1次平面ひずみ要素を使用した。材料として、胸骨・肋骨・背骨を除く臓器は、非圧縮性材料なのでゴム材料として表現(低ひずみ領域で、ポアソン比 0.499相当)した。心嚢はOgdenモデル、心筋はNeo-Hookeanモデル、心嚢と背骨をつなぐ臓器はNeo-Hookeanモデルを使用した。その他、境界条件、収束条件を設定した。その結果、圧迫を加えると軟部組織と心嚢の接合部境界領域及び、神経と心嚢接合部に最も応力が加わることが示された。応力は最大で0.90-0.92MPaに達した。従って、実臨床における胸骨圧迫においてもこれらの部位が最も損傷を受けやすいことが示唆された。
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