本研究はアルコール性肝障害の進展にアルコール脱水素酵素(ADH)がどのように関わっているかをあきらかにする基礎研究である。Wild Type(WT)/Adh1およびAdh3遺伝子欠損マウスを10%エタノール水で1ヶ月飼育し、またコントロールとして水で飼育したものを用意した。その後、4.0g/kgエタノールを腹腔内に急速投与し経時的にアルコール血中濃度を測定するとともに、各種各群から肝を取り出し肝ADH1およびADH3の酵素量・酵素活性・mRNA解析を行った。その結果、エタノール水飼育群が水飼育群よりもアルコール濃度時間曲線下面積(AUC)は有意に低く、代謝速度は有意に速く、マウスのAdh遺伝型に関わらず代謝耐性があった。さらに、酵素活性・mRNA発現は慢性飲酒によって変化しないものの、酵素量はADH1およびADH3ともに代謝速度の亢進に相関して増加した。酵素活性・mRNAは各種において有意差は認められなかった。以上より、肝ADH1・ADH3ともに代謝適応があり、慢性飲酒の初期には酵素量を増加させてアルコール代謝の亢進に寄与していることが示唆された。このように、ADH1のみならずADH3も慢性飲酒においても代謝耐性を獲得し、全身諸臓器でアルコール代謝に強く関与していると考えられた。本研究はJ Gastroenterol Hepatol. 2018;33(11):1912-19に掲載されている。
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