研究課題
ストレス関連疾患の1つである過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の病態は完全には解明されておらず、心理社会的要因、消化管運動機能異常、内臓知覚異常を中心とした「脳腸相関の病態」が想定されている。近年、この脳腸軸に対して腸内細菌叢が相互に影響し合う「脳-腸-腸内細菌軸の病態」が注目されるようになった。しかし、IBSの主要な病態生理に対して特定の腸内細菌がどのような役割を果たしているかについては十分明らかにされていない。本研究では、まずIBSの腸内細菌叢は健常者の腸内細菌叢と異なるという仮説を検証した。Rome III診断基準を満たすIBS症例12例(平均年齢22歳)と消化器症状を認めない健常症例17例(平均22歳)を対象とした。各症例から糞便検体を採取し、次世代シークエンサーを用いた16S rRNAメタゲノム解析によってoperational taxonomic unit (OTU)を同定し、各群の腸内細菌叢を比較した。その結果、IBS群と健常群において菌種多様性、類似性は統計学的に有意差を認めなかった。一方、IBS群は健常群に比較してLactobacillales目 (p=0.046)、Streptococcus科 (p=0.027)、Streptococcus属 (p=0.030)の構成比がそれぞれ有意に低下していた。以上の結果は、過敏性腸症候群患者では腸内細菌叢の異常(Gut microbiome dysbiosis)が存在しうることを示唆しており、過敏性腸症候群に想定されている脳-腸-腸内細菌軸の病態の一端を支持する所見であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、予定通りのIBS症例ならびに健常症例の募集ができた。その結果、両群における腸内細菌叢の比較解析を実行することができた。
平成29年度は、当初の計画通り引き続きIBS症例と健常者を募集して、解析対象症例を積み重ねる予定である。IBS症例における症状重症度、心理社会的背景が腸内細菌叢の変化とどのように関連しているかについても評価する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 9件、 招待講演 6件)
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