研究課題
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の病態生理として、心理社会的要因、消化管運動機能異常、内臓知覚異常を中心とした脳腸相関の病態が想定されている。近年、これらの病態に腸内細菌が何らかの役割を果たしているのではないかと考えられるようになった。しかし、そのIBS病態に特定の腸内細菌種あるいは代謝物がどのように関連しているかについてはよく明らかにされてはいない。本研究では、IBS患者の腸内細菌叢とその機能は健常者とは異なっているという仮説を検証した。IBS患者32例と健常者21例から糞便を採取し、次世代シーケンサーを用いた16SrRNAメタゲノム解析によってV3-V4可変領域のoperational taxonomic unit (OTU) を同定した。症状重症度にはIBS severity index (IBS-SI)を、抑うつ症状にはSelf-rating Depression Scale: SDS)を用いて評価した。消化管知覚としてバロスタット装置を用いて直腸伸展刺激に対する便意・痛覚閾値を評価した。IBS患者では健常者と比較してIBS重症度スコア、抑うつスコアの有意な高値を認めた。IBS患者では便意閾値の有意な低下を認めた。IBS群では、糞便中のFaecalibacterium とCoprococcus が有意に増加し、Dialisterが有意に低下していた。メタゲノム機能では、セリン・プロテアーゼ関連遺伝子量が健常者よりも低下傾向を示した。さらに代謝パスウェイ解析を実行した結果、IBS群は健常群に比較して、アミノ酸代謝の有意な低下が認められた。以上の所見より、IBS患者では腸内細菌に関連する酵素などのアミノ酸代謝の変化がIBSの病態生理に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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