研究課題/領域番号 |
16K09235
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
濱野 忠則 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (40334817)
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研究分担者 |
白藤 法道 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (40529319)
吉田 裕孝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 共同利用推進室, 室長 (70646570)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タウ蛋白 / オリゴマー / ROCK阻害薬 / オートファジー |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の主要な病理所見である神経原線維変化(NFT)は、タウ蛋白のリン酸化、オリゴマー形成を介した重合促進によ り形成される。さらにタウオリゴマーはNFTよりも細胞毒性が強いことが明らかである。我々は脂質異常症治療薬pitavastatinがタウ 蛋白リン酸化、重合を阻害すること、さらにこの現象はRho-キナーゼ(ROCK)阻害効果に起因するという可能性を見出した(Hamano et a l., Neurobiol Aging 33:2306, 2012)。我々はTET-OFF誘導系を導入し、3種類の野生型タウ(4R0N, 4R1N, 3R1N)を発現する神経細胞株 を用いた検討を行ってきた。その結果、ライソゾーム・オートファジー系(Hamano et al. Eur J Neurosci 27:1119, 2008)、プロテ アゾ-ム(Hamano et al., Int J Clin Exp Pathol 2009)がタウ分解に重要な役割を果たすことを見出した。また脂質異常症治療薬pi tavastatinがタウ重合量、ならびにリン酸化を抑制することを見だした。今回、TET-OFF誘導系を導入した神経細胞株を用いて、ROCK 阻害薬によるタウ蛋白オリゴマー形成抑制機構につき詳細に解析する。同時に変異型タウモデルマウス(P301L)にROCK阻害薬を投与す ることによるタウオリゴマー形成抑制機構についてもin vivoで解明することを目的とした研究を行った。その結果、我々の予備的検 討では、ROCK阻害薬によるリン酸化タウの減少が免疫組織学的検討により示された。ROCK阻害薬によるタウリン酸化酵素、Cdk5の活性 低下が明らかとなった。また、ROCK阻害薬により、トリス不溶性、サルコシル可溶性画分で120 kDaのTOC1陽性オリゴマータウが明ら かに減少することが示された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
神経系細胞モデルを用いた検討により、ROCK阻害剤(H1152, Y-27632)による総タウ、リン酸化タウの減少がWestern blot法、ならびに 免疫組織化学法により示された。またタウリン酸化酵素(GSK3β、cdk5)活性の低下を示すことができた。さらにROCK阻害薬による120k Daのタウオリゴマーの減少が画分法、ドットブロット法により明らかとなった。また凝集能の高いC末端の切断したタウの減少、およ びcaspase3の活性低下、BCL2の増加が示された。また炎症性サイトカインIFNγの減少も示された。画分法により、サルコシル不溶性画分のタウの増加が示された。タウ分解経路として、オートファジーの活性亢進がLC3, P62を用いたWestern blot法により証明された。さらにプロテアソ-ムの活性亢進も示された。ROCK阻害薬による神経系細胞死は誘発されなかった。また内在性タウに対するROCK阻害薬の効果に関しては 、マウスニューロン初代培養を用いた検討や、TetOff誘導系によりタウを強制発現する前の神経系細胞によりリン酸化タウを減少させる同様の効果があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は死後脳を用い、アルツハイマー病患者脳でのROCK2の発現レベルを免疫組織学的に確認することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の事情により一部の金額の遂行が困難であった。
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