研究課題
パーキンソン病を含めたパーキンソン症候群(PS)は,原因不明な進行性の神経変性疾患であり,未だに有効な治療法はない.PSでは,臨床的に鑑別診断が困難な場合が少なく,PS各疾患の臨床症状や予後,薬物への反応性などその相違は明らかではなく,詳細な研究の推進が待たれている.申請者らは脳脊髄液を用いた網羅的な質量分析にてPSのひとつである進行性核上性麻痺に特異的な診断マーカー候補としてchromogranin B由来ペプチドを得ている.本研究では,詳細な臨床情報の整った多数例のPS症例における候補分子を測定,あるいは,分子生物学的な手法を用いた解析を行い,PSにおける早期診断,病態解明,さらには,治療戦略を開発することを目的としている.PSP疾患特異的な候補分子であるbCHGB_6255について分子生物学的な手法を用いて,アミノ酸配列の決定,関連分子の同定,Western blotting法などによる定量化を確立し,臨床症状や健常対象検体との比較によって,PSの病態の探索を進める計画であり,本年度はbCHGB_6255に含まれる14アミノ酸からなるペプチドを合成し,ウサギに免疫することによってポリクローナル抗体を作成し,抗体の解析を進めたが,抗原検出が不安定であり,定量化までには至っていない.新たに2種類の抗体を用いた解析を進めている.並行して詳細な臨床情報が揃った生体試料の収集を進めている.申請者が参画している進行性核上性麻痺(PSP)/大脳皮質基底核変性症(CBD)などの臨床情報,画像,生体試料,遺伝子試料を収集する多施設共同前向き研究であるJALPAC(Japanese Longitudinal Biomarker Study in PSP and CBD)研究では41施設が参加し,217例(PSP117例,CBS/CBD48例,その他45例,コントロール7例)の生体試料を収集した.
3: やや遅れている
本研究に関して,目的の分子であるbCHGB_6255に対する抗体を作成したが,不安定であり.当初予定より解析に時間を要している.新たに他の2種類の抗体を用いた解析を継続している.多数例での解析を行うための詳細な臨床情報が揃った生体試料の収集は順調に進んでいる.
新たに2種類の抗体を用いて,bCHGB_6255の領域を狭め,さらには,Western blotting法を応用したbCHGB_6255の定量化を目指す.脳脊髄液を用いたWestern blotting法やELISAの確立,免疫沈降法やHPLCを用いた標的分子のアミノ酸配列の決定,関連分子の探索,さらには,病理組織を対象とした免疫染色への応用を進めて行く計画である.また,更に多数例のPS症例の臨床情報,生体試料の収集を継続し,多数例での解析を目指す.
bCHGB_6255の解析のために作成したモノクローナル抗体が不安定であり,当初の研究計画より解析に時間を要しているために研究費の使用が遅れている.本研究において解析の目的分子の抗体作成が大きな関門となっているが,新たに2種類の抗体を加え,更なる解析を継続している.
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