研究課題/領域番号 |
16K09239
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
瀧川 洋史 鳥取大学, 医学部, 講師 (30511373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経学 / 老年学 / 神経変性疾患 / 分子生物学 / 進行性核上性麻痺 / 大脳皮質基底核変性症 / パーキンソン症候群 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病を含めたパーキンソン症候群(PS)は,原因不明な進行性の神経変性疾患であり,未だに有効な治療法はない.PSでは,臨床的に鑑別診断が困難 な場合が少なく,PS各疾患の臨床症状や予後,薬物への反応性などその相違は明らかではなく,詳細な研究の推進が待たれている.申請者らは脳脊髄液を用いた 網羅的な質量分析にてPSのひとつである進行性核上性麻痺に特異的な診断マーカー候補としてchromogranin B由来ペプチドを得ている.本研究では,詳細な臨床 情報の整った多数例のPS症例における候補分子を測定,あるいは,分子生物学的な手法を用いた解析を行い,PSにおける早期診断,病態解明,さらには,治療戦 略を開発することを目的としている. PSP疾患特異的な候補分子であるbCHGB_6255について分子生物学的な手法を用いて,アミノ酸配列の決定,関連分子の同定,Western blotting法などによる定量 化を確立し,臨床症状や健常対象検体との比較によって,PSの病態の探索を進める計画であり,bCHGB_6255に含まれる14アミノ酸からなるペプチドを合 成し,ウサギに免疫することによって得られたポリクローナル抗体,あるいは,別の2種類の抗体を用いた解析を進めたが,抗原検出が不安定であり解析は困難であった.bCHGB_6255のアミノ酸配列を決定することを目指し,de novo解析,HPLCによる単離を試みている. 並行して詳細な臨床情報が揃った生体試料の収集を進めている.申請者が参画している進行性核上性麻痺(PSP)/大脳皮質基底核変性症(CBD)などの臨床情 報,画像,生体試料,遺伝子試料を収集する多施設共同前向き研究であるJALPAC(Japanese Longitudinal Biomarker Study in PSP and CBD)研究では44施設が 参加し,271例(PSP149例,CBS/CBD61例,その他51例,コントロール10例)の生体試料を収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究に関して,目的の分子であるbCHGB_6255を抗原として作成した抗体を含め3種類の抗体を用いて解析したが,不安定であり,定量化に適した検出を得ることは出来なかった.bCHGB_6255のアミノ酸配列を決定することを目的にde novo解析,HPLCによる分離,LC-MS/MSによる解析を試みている.当初予定よりbCHGB_6255の定量化の確立に時間を要しているが,多数例での解析を行うための詳細な臨床情報が揃った生体試料の収集は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
bCHGB_6255のアミノ酸配列を決定するためにde novo解析,HPLCによる分離,LC-MS/MSによる解析を進める.アミノ酸配列が決定出来ればペプチド合成によって標準試料を作成し,HPLCによる定量化を確立する.多数例での解析を進めると主に関連分子の探索,さらには,病理組織を対象とした免疫染色への応用を 進めて行く計画である.また,更に多数例のPS症例の臨床情報,生体試料の収集を継続し,多数例での解析を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
パーキンソン症候群のバイオマーカー候補であるchromogranin B由来のbCHGB_6255解析のためにbCHGB-6255予想領域の 2抗体,ウサギを免疫することで得たポリクローナル抗体について検討したが,bCHGB_6255検出が不安定で解析には不 適切であった.de novo解析,HPLCによるbCHGB_6255のアミノ酸配列の決定,定量化,モノクローナル抗体作成を試みている.
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