研究課題/領域番号 |
16K09244
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 舞欧 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (20734982)
|
研究分担者 |
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
小原 知之 九州大学, 医学研究院, 助教 (20623630)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 孤独感 / 認知症 / 久山町研究 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本人の代表的サンプルと考えられる久山町地域一般住民の65歳以上の高齢者およびその同居家族約2700人を対象に,心理社会的因子,家族機能を調査し,認知症の発症,予後,行動・心理症状への関連を縦断的に検討することを目的としている. 平成28年度は,平成24年度までに収集したデータ(心理社会的因子,認知症)の整備を行い,平成29年の追跡研究のためのベースラインデータセットを作成した.このベースラインデータセットを用いて,心理社会的因子と認知症の関連を検討した.平成24年に福岡県久山町で高齢者調査を受けた65歳以上の住民で,孤独感に関する質問紙に回答した1187名を対象に認知症と孤独感の関連について検討した.社会的な人間関係が少ない孤独感である社会的孤独感を有する割合は健常群で18%,軽度認知障害群で24%,認知症群で31%であった.人間関係における親密さが少ない孤独感である情緒的孤独感を有する割合は,健常群で15%,軽度認知障害群で28%,認知症群で35%であった.ロジスティック回帰分析を用いて性年齢調整を行い,この関連を検討しても健常群,軽度認知障害群,認知症群と認知機能が低下するごとにいずれの孤独感も有意に上昇していた(P for trend <0.001).心理社会的背景因子である婚姻状況,独居の有無,家族や友人との交流頻度,生活機能障害,抑うつ症状を調整すると社会的孤独感の有意差は消失したが,認知機能低下と情緒的孤独感の関連は残った(P for trend <0.001).軽度認知障害や認知症に対応していくうえで,孤独感を考慮することの重要性が示唆された.今後これらの関係を縦断的に解析し,孤独感と認知症の因果関係を明らかにしていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までに収集したベースラインデータ(心理社会的因子,認知症,脳画像)の整備を行い,平成29年の追跡研究のためのベースラインデータセットをはほぼ完成し,最終チェック段階になっている.完成した一部のデータセットを用いて解析を行い,学会発表を行った. コンピュータータッチパネル式質問紙検査のための質問紙プログラム作成やコンピューター購入は完了した.質問紙検査を行う人員の募集は,調査が6月開始のため,4月以降に募集することとした.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに収集したのベースラインデータセットの最終確認を行う.平成29年度の調査のため,人材募集を行う.平成29年度は当初の予定通り久山町の生活習慣病健診(住民の80%以上が受診)を受診した65歳以上の高齢者およびその同居家族約2700人を対象としてコンピュータータッチパネル式質問紙検査を行う.さらに65歳以上の高齢者に対し認知症調査と頭部MRI検査を行う.準備は順調に進捗している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,ほとんど分担研究者の配分であるが,調査を実施する次年度に経費が必要なため繰り越された.
|
次年度使用額の使用計画 |
疫学調査の費用や学会発表の旅費等に使用されると考えられる.
|