研究課題/領域番号 |
16K09248
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 成志 大分大学, 医学部, 准教授 (30433048)
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研究分担者 |
花岡 拓哉 大分大学, 医学部, 助教 (40433057) [辞退]
麻生 泰弘 大分大学, 医学部, 助教 (80555194)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症予防 / 大脳白質病変 / 血管危険因子 / neurovascular unit / アミロイドPET / FDG-PET / MRI |
研究実績の概要 |
これまで我々は、アルツハイマー病における大脳白質病(WMLs)が、前頭葉を主体とした脳機能低下および認知機能障害の進行に影響することを明らかにしてきた。平成29年度は、軽度認知障害者(MCI)の脳血流に対するWMLsの影響を脳血流SPECTにて検討し、論文報告した。(Clin Neurol Neurosurg. 2018 168:7-11.)更に、WMLsによりneurovascular unit障害が障害され、この障害がアルツハイマー病の病因である脳内アミロイド蓄積や変性過程を示す脳糖代謝低下および脳萎縮に影響する可能性を検討した。アミロイドPET陽性の健忘型MCI症例(n=43,男:女= 21:224,平均年齢 75.3歳)を対象とし、Fazekas scaleで白質病変あり群(WMLs +)と白質病変なし群(WMLs -)に分類した。2群間で神経心理検査、PiB PETによる脳内アミロイド蓄積量、FDG PET による脳糖代謝量、3.0T MRI による海馬萎縮率等の画像評価、血漿中のneurovascular unit障害の障害マーカーを比較した。WMLs+群はWMLs-群と比較して高血圧の有病率が有意に高く、ADAS、WMS-Rが有意に低下していた。脳内アミロイド蓄積や脳糖代謝、海馬萎縮率には有意差はなかった。TIMP 1-4はWMLs+群で有意に低下していた。MMP 2, 8, 9, 10, 13、Fibrinogen、Plasminogenは、WMLs+群で有意に増加していた。大脳白質病変の重症度と脳内アミロイド蓄積、脳糖代謝、海馬萎縮率、neurovascular unit障害マーカーの有意な相関は認めなかった。TIMPが低下しMMPが上昇することで細胞破壊が起こり、脳血液関門の破壊を引き起している可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭部MRIの大脳白質病変(WMLs)は、半定量法であるFazekas scaleによって評価してきた。Fazekas scaleは、WMLsの重症度を視覚的にgrade0-IVの5段階に分類するものである。 対象とする疾患が血管性認知症であれば、様々な重症度のWMLsを認めるため、他の因子との相関を求めることが可能である。しかし、我々の軽度認知障害例では、WMLsがgrade0-2と軽度であったため、WMLsの重症度ごとの分類や相関解析は施行できず、病変の有無による2群間比較のみを行った。2群間比較では、TIMP 1-4はWMLs+群で有意に低下し、MMP 2, 8, 9, 10, 13、Fibrinogen、Plasminogenは、WMLs+群で有意に増加していた。この結果からneurovascular unit障害がWMLsの形成に関与している可能性が推測された。しかし、WMLsの重症度とneurovascular unit障害マーカー、脳内アミロイド蓄積、脳糖代謝、海馬萎縮率の有意な相関は認めなかった。従って、MRI画像からWMLsの容積を算出することを検討している。画像解析方法を確立し、全症例のデータ処理が終了するまでに時間を要しており、研究の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
MRI画像からWMLsの容積を算出する画像解析方法を確立し、全症例のデータ処理を行う。その後にNVUの破綻に関連する分子としてBlood-brain barrier(BBB) marker (Albumin, Cyclophilin A)、pericyte marker (β-type platelet-derived growth factor receptor)、endothelial marker (Vascuolar Cell Adhesion Molecule 1)、astrocyte marker (Soluble Protein-100B)がら優先順位の高い分子を選択し、ELISA法にて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでにneurovascular unit障害マーカーは、Plasminogen、Fibrinogen、VCAM1 をELISA法、MMP 1-13 (matrix metalloproteinase)、TIMP 1-4(tissue inhibitor of matrix metalloproteinase)をBio-Plex multiplex systemを用いて測定した。現段階においても新規性の高い結果が得られているが、研究目的の達成にはより正確な画像解析法の確立が不可欠となった。問題は、頭部MRIの大脳白質病変(WMLs)を半定量法であるFazekas scaleによって評価した場合、WMLsの重症度ごとの分類や相関解析が施行できなことである。従って、MRI画像からWMLsの容積を算出する画像解析方法を検討している。血漿サンプル量に限りがあるため、画像解析方法を確立し、全症例のデータ処理が終了後に他のバイオマーカーを測定する予定である。次年度には、これまで測定した以外のneurovascular unit障害マーカーから優先順位の高い分子を選択し、ELISAキットの購入を行い予定である。
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