研究課題/領域番号 |
16K09250
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
池田 義之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (00573023)
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研究分担者 |
赤崎 雄一 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (00631920)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オートファジー / 血管老化 / 動脈硬化 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
本研究は、「オルタナティブオートファジーを主体としたマイトファジーの低下が血管の老化や動脈硬化形成のメカニズムに大きく関与していることを明らかにすること」を目的とし、その為に以下の4つの研究を行うことを計画した。 (1) 加齢に伴うミトコンドリアの機能障害進展状況、異常ミトコンドリアの蓄積状況、コンベンショナルおよびオルタナティブ各々のオートファジーの加齢性変化を明らかにする。 (2) 動脈硬化と、コンベンショナルおよびオルタナティブ各々のオートファジー及びミトコンドリア障害との関係を明らかにする。 (3) 血管におけるオルタナティブオートファジーとマイトファジ―との関係を明らかにする。 (4) オルタナティブオートファジーの亢進により、血管におけるマイトファジーを介したミトコンドリアの質管理が活性化し、ミトコンドリア機能改善・酸化ストレス軽減から血管老化・動脈硬化進展を抑制するという、改善効果を明らかにする(Rescue実験)。 これら4つの研究のうち、初年度の平成28年度および本年平成29年度の2年間において、(1)~(3)を完了できた。以下に具体的に列記する。 (I)正常マウスと易動脈硬化モデルマウスとの比較において、コンベンショナルオートファジーに必須のLC3発現には差がなかった一方、オルタナティブオートファジーに必須のRab9発現が有意に低下していたことを明らかにした。 (II)動物実験や、培養血管平滑筋細胞を用いた実験で、オートファジー(オートライソゾーム)形成に必須のLamp2とRab9の発現が一致しており、かつミトコンドリアタンパクであるTOMM20とも一致していた。また、rab9発現が低下した血管ではミトコンドリア機能が低下していた。以上から、rab9依存性オルタナティブオートファジーは血管においてマイトファジーとして機能していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に、平成29年度実施研究として計画していた、「血管におけるオルタナティブオートファジーとマイトファジーとの関係に関する検討」を完了できている。 以下、具体的に列記する。 (1)培養血管平滑筋細胞にストレスをかけると、従来のコンベンショナルオートファジーに必須であるLC3には非依存性であり、かつRab9依存性のオルタナティブオートファジーが増加することを明らかにした。 (2)免疫化学染色や電子顕微鏡の検討により、ミトコンドリアを内包するオートファジー(即ちマイトファジー)がRab9依存性オートファジーであることを明らかにした。 (3)易動脈硬化モデルマウスやカフ血管障害モデルマウスの実験により、動脈硬化や血管障害にRab9依存性オルタナティブオートファジーの低下が関与していること。また、ミトコンドリア機能障害が高度であること。以上より、オルタナティブオートファジーを基盤としたマイトファジーの低下により、異常ミトコンドリアが蓄積し、結果動脈硬化進展や血管障害進展を及ぼしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、申請時に計画していた「オルタナティブオートファジーの亢進により、血管におけるマイトファジーを介したミトコンドリアの質管理が活性化し、ミトコンドリア機能改善・酸化ストレス軽減から血管老化・動脈硬化進展を抑制するという、改善効果を明らかにする(Rescue実験)」を遂行していく。具体的には、Rab9の過剰発現や、TAT-Beclin1を用いてオルタナティブオートファジー発現を回復させることで、マイトファジーの回復から異常ミトコンドリアの排除が促されることを確認する。また、様々な薬剤を使用し、オルタナティブオートファジーを誘導しうるような、候補薬剤を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施計画を行っていたImmunoblot用試薬が計画よりも安く購入することができたため、差額を生じた。ただし平成30年度には計画時よりも多くのImmunoblotを行う必要性もあり、この差額を平成30年度研究に使用させていただく計画である。
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