研究課題
本研究では、Vγ1Vδ1型γδT細胞株を活性化するような生薬中の成分を同定するため、Vγ1Vδ1型TCRを発現したT細胞株クローンよりVγ1及びVδ1のTCR遺伝子を採取し、TCR欠損株であるJ.RT3-T3.5に遺伝子導入しVγ1Vδ1型γδT細胞株(1C116)の樹立に成功した。一方、末梢血より樹立したVγ2Vδ2型T細胞株よりVγ2及びVδ2のTCR遺伝子を採取し、J.RT3-T3.5に遺伝子導入しVγ2Vδ2を発現したγδT細胞株(2C21)を樹立した。そして、これら1C116及び2C21が、抗CD3抗体を用いてTCRをcross-linkさせるとIL-2を放出することを確認した後、特異抗原刺激に伴いIL-2を放出することを確認した。そして、クローン2C21が、これまでに報告された他のVγ2Vδ2型TCR刺激活性化物質である結核菌由来のピロリン酸(IPP)等 に応答することを確認した。一方、Vγ1Vδ1型TCRを発現した1C116株はこれらの抗原に全く応答しないことを確認後、天然生薬成分に含まれると推測される成分群であるフラボノイド、テルペノイド、アルカロイド等に着目し、それらとの共培養により1C116 からIL-2の分泌が刺激されるかを指標として刺激物質を探った結果、フラボノイド群含まれるケルセチンに応答することが確認された。1C116をより強く刺激する物質を類似物質の中より探索した結果、フラボノイド群に含まれるヘスペリジンとリナリンを見いだした。このヘスペリジンとリナリンを末梢血単核球に加えたところ、予想通りVγ1Vδ1型γδT細胞が誘導・活性化され、IL-5、IL-33およびMIP-1α、MIP-1βが放出された。現在これらの刺激が、NKT細胞内の感染HIV-1の増殖を抑制することを調べており、その結果をもとにこれら物質に対する特許申請を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、NKT細胞内に潜伏・増殖するR5型のHIV-1を制御するような、物質を天然生薬中より見いだすことが最大の目的であったが、その物資探索に用いる細胞であるVγ1Vδ1を発現した1C116の作成することができた。Vγ1Vδ1型γδT細胞株を活性化するような生薬中の成分を同定するため、Vγ1Vδ1型TCRを発現した1C116株に天然生薬成分のに含まれると推測される物質群として、フラボノイド、テルペノイド、アルカロイド群などに着目し、物質の同定に努めた結果、1C116株に応答性を有する物質としてフラボノイド群より、ケルセチンを見いだした。この事実に基づき、1C116をより強く刺激する物質を類似物質の中より探索した結果、フラボノイド群に含まれるヘスペリジンとリナリンを発見した。このヘスペリジンとリナリンを末梢血単核球に加えたところ、当初の予想通りVγ1Vδ1型γδT細胞が誘導・活性化され、IL-5、IL-33およびMIP-1α、MIP-1βが放出された。この時点で、予想を上回る結果が得られたものと考えられる。
以上の結果に基づき、本年は研究成果をまとめる最終年度として、現在のHAART治療に加えることのできる新たな治療指針を展開する予定である。そのために、まず発見した物質を末梢血単核球に添加培養し刺激し、Vγ1Vδ1型γδT細胞が選択的に活性化されることを確認する。同定した物質が広くVγ1Vδ1型γδT細胞の活性化能を有する物質であることを検討する。次に、刺激後の末梢血単核球の培養上清を採取保存し、それをR5型HIV-1に感染したCD4陽性NKT細胞に添加することによって、HIV-1の増殖が抑えれる否かをHIV-1.P24タンパク質を指標として追跡する。また活性化に伴い放出された物質が、多数のヒトにおいて抗HIV-1効果を示すかに関しても検討する。また一方において、R5型HIV-1に感染したCD4陽性NKT細胞と高橋の末梢血に同定した物質を添加培養することによって、P24抗原の放出が抑制されるか否かに付いても検討する。以上の結果をもとに、論文作成、ならびに同定した生薬由来及びVγ1Vδ1型T細胞活性化に関する特許の申請に取り組む。
当初購入を予定していたものを、購入せずとも研究の進展が可能になったため。次年度の予算と合わせて、多数の抗体試薬や培養器具を購入する予定である。
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