本研究は、心身医学的な量的調査と医療人類学的な質的調査を通して、原発事故広域避難者のストレスや孤独死・自殺予防のための新たな「社会的ケア」モデルの構築を目指しているものである。そのため、研究者らは、民間支援団体「震災支援ネットワーク埼玉(以下SSN)」、埼玉弁護士会等と協働し、事故直後から今まで “支援”を前提とした研究を継続させてきた。 2016年度当初の研究計画通り、[A]大規模アンケート調査、[B]被災者・被害者へのインタビュー調査、[C]ハーバード大学との海外連携、[D]民間支援団体と共に企画実践するフィールドワーク、の4手法を用いた調査研究を継続してきた。今年度特記すべき成果として、原発事故発生直後から2018年まで続けてきた大規模アンケート調査結果をもとに、原告となった被災者を救済するための裁判や生活再建を確保するための裁判への提言書・意見書を作成したことが挙げられよう。 これまでに共同して活動を行ってきた民間支援団体「震災支援ネットワーク埼玉(SSN)」は昨年度に引き続き、交流会やコミュニティカフェ等の地道な支援活動を行っている。また、時間の経過とともに、被災者のニーズや必要とされる支援活動が変化してきていることから、その変化に伴う今後の新たな調査研究を企画するに先立って、被災者の現状を把握する必要があると考えられた。そこで、今年度はNHKと協働し、2019年度の首都圏大規模アンケート調査用紙を作成し、実施を行った。 この調査研究結果をもとに、東日本大震災発生10年目になる2020年~2021年に実施予定の全国大規模アンケート調査用紙の作成および実施、その後の長期的な研究計画を立てていきたい。
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