研究実績の概要 |
H29年度に実施したin vivo実験系の結果より慢性ストレスによる交感神経緊張低下状態が肺胞マクロファージの貪食能低下関与していることを見いだした。 そこで今年度は自律神経系を介した伝達経路が肺胞マクロファージの貪食能変化に関するシグナル伝達経路にどのような影響を及ぼしているかを詳細に検討した。SARTストレスマウスおよび正常マウスから採取した肺胞Mφに交感神経作用薬であるノルアドレナリン及びアドレナリン(α,β作用)イソプロテレノール(β作用)と副交感神経作用薬(カルバコール(ニコチン及びムスカリン作用))を適用し貪食能活性を評価したところ,アドレナリンとイソプロテレノールがSARTストレスにより惹起した肺胞マクロファージ貪食能低下を改善した。また,選択的β1受容体遮断薬アテノロールの前処置ではこれらの効果に対して変化は認められなかったが,選択的β2受容体遮断薬ICI-118,551 の前処置によりその効果が無効となったことから,慢性ストレスによる貪食能活性低下状態にはβ2受容体が重要な役割を果たしていることが示唆された。 次にβ2受容体を介した細胞内シグナル伝達経路を詳細に検討した。その結果,アデニル酸シクラーゼ活性化薬,PKA阻害薬およびMEK阻害薬ではこの貪食能低下に影響しなかったが,GRK5阻害薬により改善された。つまりGRKによりβアレスチンを介した経路が関与していることが示唆された。
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