研究課題/領域番号 |
16K09272
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研究機関 | 大阪保健医療大学 |
研究代表者 |
藤岡 重和 大阪保健医療大学, 大阪保健医療大学 保健医療学部, 教授 (20319528)
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研究分担者 |
寺崎 文生 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20236988)
宗宮 浩一 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20319544)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | たこつぼ型心筋症 / ストレス心筋症 |
研究実績の概要 |
たこつぼ型心筋症は1990年代にわが国で疾患概念が確立され、現在では国際的に広く認識された心病態である。典型例では精神的あるいは身体的ストレスを契機に急性心筋梗塞に酷似した胸痛と心電図変化で発症する。左室の収縮異常の形態が日本古来の蛸壷漁で使われる素焼きの蛸壷に似ていることから、この命名がなされた。こうした左室壁運動異常は、通常数週間で回復することが本症の特徴であるが、急性期に心原性ショック、心室細動、心破裂を起こして死亡することがあり病態、病因の解明が急務である。 本年度は、たこつぼ型心筋症12症例において臨床像とその転帰を検討した。平均年齢78歳、男性3例(25%)、女性9例(75%)。病型は全例が心尖部型であり、心室中部型、心基部型、局所型は認めなかった。入院時の左室駆出率は平均42%であった。発症誘因は、身体的ストレス4例(33%)、精神的ストレス1例(8%)、誘因なく発症が7例(58%)であった。自覚症状は、胸痛5例(42%)、呼吸困難3例(25%)、胸部不快感1例、意識消失1例、嘔吐1例、下肢脱力感1例であった。合併症は、1例が高度心不全のため補助循環装置を必要とした。1例で心房細動、心房粗動を認めた。予後は11例(92%)で心機能は回復したが、入院中に1例は基礎疾患の増悪により死亡した。 心電図所見では、ST上昇は10例(83%)でみられた。 ST上昇の総誘導数は平均6.5誘導であった。最大ST上昇度は、9例(75%)において4 mm以下で V2-4誘導で最大上昇度を認めた。1例で25mmのST上昇があった。経過中に陰性T波は11例(92%)に認めた。陰性T波の総誘導数は平均7.1誘導であった。一過性Q波は5例(42%)で形成された。J波は認めなかった。深いQ波を形成する症例では、左室駆出率が低い傾向を認めた。たこつぼ型心筋症の発症頻度は、急性冠症候群の約2%と稀な病態であるため、次年度以降も、症例を重ね本症の臨床像、病態、予後を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本学解剖学・病理学研究室が閉鎖となり、学内施設で本症モデル動物心筋を用いた病理組織学的、分子生物学的研究の実施が困難となった。そのため、次年度以降に予定していた本症の臨床像、転帰に関する臨床研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、実験設備を含む研究体制を整え、本症モデル動物において心筋微量元素の動態とストレス蛋白発現との関連を検討する。昨年度に続いて、たこつぼ型心筋症の臨床像、病態、予後に関する研究を進める。また、心電図解析によるST上昇の総誘導数、最大ST上昇度、陰性T波の総誘導数、一過性Q波、J波の形成から左室機能、合併症、予後の予測が可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本学解剖学・病理学研究室の閉鎖にともない、学内施設でモデル動物心筋を用いた病理組織学的、分子生物学的研究の実施が困難となった。そのため主要設備備品費、病理組織、分子生物実験関連の消耗品費の支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、研究代表者の研究室において実験設備を含む研究体制を整える予定である。当該研究経費は、当初予定の主要設備備品の購入と病理組織、分子生物実験関連の消耗品購入に充当する。
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