研究実績の概要 |
今年度までに、当初目標としていた、摂食障害罹患同胞10家族を対象に、罹患者20名および非罹患者18個体の合計38名のエクソームシークエンシングが完了した。平均Depthは全個体70-80以上であり、この値はシークエンシング対象領域のシークエンシングカバー率が上限に到達するものである。 各家族について、de novo, dominant, recessive, compound すべての遺伝様式について、罹患同胞で一致する変異を抽出した。これらの変異のうち、日本人集団で1%以下の頻度ならびに、8種類のすべての変異評価プログラムが(SIFT, Polyphen2, LRT, Mutation Taster, Mutation Assessor, FATHMM, GERP++, PhyloP) タンパク質の構造を変化させうると予測した変異に厳選した。その結果、2個の変異へと絞り込むことに成功した。これらの変異はそれぞれ2つの異なる遺伝子に存在し、どちらもGPCR(Gタンパク質共役型受容体)遺伝子であった。一つの遺伝子は、autism, loneliness, schizophrenia, alcohol dependence, ADHD, neurodevelopmental disorder, eating behavior, smoking behavior などの様々な神経精神疾患と遺伝学的な関連がこれまでに示されている。さらにもう一つの遺伝子は、食欲抑制に関与しているホルモンの受容体をコードしており、機能的に既に摂食障害の候補タンパクとして考えられているものである。したがって、今回見出された2遺伝子は摂食障害原因遺伝子の可能性が極めて高いものであった。
|