研究実績の概要 |
摂食障害(ED)の遺伝率は高いが、ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、その多くを説明できる原因変異は見いだされていない。本研究の目的は、ED家族症例を対象にエクソーム解析を実施しED発症に寄与する原因変異ならびに遺伝子を同定することである。ED罹患同胞10家族を対象に、罹患者20名および非罹患者18個体の合計38名のエクソームシークエンシングが完了した。観察された全700,055個の変異を日本人集団で1%以下の頻度で、かつ8種類の変異評価プログラム (SIFT, Polyphen2, LRT, Mutation Taster, Mutation Assessor, FATHMM, GERP++, PhyloP) の全てがタンパク質の構造の変化を支持するという、極めて厳しい条件でフィルタリングし、11個の変異へ候補が絞り込まれた。さらにこの変異の中から各家族についてde novo, dominant, recessive, compound 全ての遺伝様式について罹患同胞で一致する変異を検索し2個の変異へと絞り込むことに成功した。さらに、サンガーシークエンシングにより2個の変異は確認された。 これらの変異はそれぞれ2つの異なる遺伝子に存在し、いずれもGタンパク質共役型受容体 (GPCR) 遺伝子であり、1つはcorticotropin releasing hormone receptor 2 (CRHR2) であった。この遺伝子はノックアウトマウス等の解析からストレスで惹起される食欲不振、血圧低下等に関与するとされる。もう1つの glutamate receptor, metabotropic 8 (GRM8) は、統合失調症、自閉症、アルコール依存症、注意欠陥多動性障害との遺伝学的関連が示唆されている。今回見出された2遺伝子はED原因遺伝子の可能性が高く、画期的である。
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