研究課題/領域番号 |
16K09279
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成田 明子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30772917)
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研究分担者 |
平田 喜裕 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10529192)
木下 裕人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50645322)
早河 翼 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60777655)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胃癌 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
H28年度はLSL-RhoA Y42Cベクターをクローニングし、遺伝子導入してLSL-RhoAY42Cマウスを作成した。このLSL-RhoA Y42CマウスをTFF1-BAC Creマウスと交配し胃粘膜におけるトランスジーンの発現を検討した。4w齢のマウスより胃組織を摘出してイムノブロットを行い、RhoA Y42Cの発現を確認した。発現の強い1系統(Line-A)と発現量が中等度の1系統(Line-B)を樹立した。 H29年度はTFF1-BAC Cre; LSL-RhoA Y42Cマウスの胃粘膜の表現系を経時的に検討した。4w齢マウスの病理所見では、野生型に比して軽度粘膜の萎縮の傾向を認めたが、6mまで観察期間を延長すると、HE染色による胃底腺の構造、炎症は野生型と同等であり、炎症細胞浸潤がみられず、また印鑑細胞癌(signet ring cell carcinoma)からなるびまん性胃癌は認めなかった。免疫染色と系譜追跡法により胃底腺の構成細胞である腺窩上皮、頸部粘液細胞、壁細胞、主細胞などの分化について検討した。TFF1-BAC Cre; LSL-RhoA Y42Cマウスにおけるこれら胃底腺細胞の配置、および数は野生型マウスと同程度であり、腺窩上皮のRhoA Y42C変異は、胃底腺の分化異常を誘導しないことが明らかになった。 またTFF1-BAC Cre; LSL-RhoA Y42Cマウス胃粘膜より三次元培養を行い、オルガノイドを作成した。遺伝子変異のない野生型オルガノイドと細胞増殖の程度を比較し、ほぼ同程度の増殖能を有することが分かった。またTFF1、TFF2、pepsinogenなどの発現について現在q-PCRで検討している。 また現在誘導型発現モデルにおける検討のために、K19-creERT; LSL-RhoA Y42Cマウスの作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LSL-RhoA Y42Cトランスジェニックを樹立しTFF1プロモーターを用いて胃粘膜での発現を確認した。また腺窩上皮におけるRhoA Y42Cの役割を検討し、異常分化や異常増殖に関連しないことを明らかにした。これらの結果より腺窩上皮におけるRhoA Y42C変異は、びまん性胃癌のドライバー変異ではない可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
K19-creERT;RhoA Y42Cマウスにタモキシフェンを投与し、一過性RhoA変異が胃粘膜に与える影響を検討する。またRhoA Y42CとE-cadherinの二重変異の影響を検討するためにTFF1-BAC Cre; LSL-RhoA Y42CマウスをE-cadherinのコンディショナルノックアウトマウス(CDH1f/fマウス)と交配し、経時的に胃粘膜の組織を観察する。 またこれらマウスの胃粘膜から胃底腺を分離し三次元培養を行い、オルガノイド発育やin vitroの分化におけるRhoAの機能について検討する。
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