研究課題
申請書の計画通り、内因性のマウスAldh2遺伝子をヒトALDH2野生型遺伝子(ALDH2*1)またはヒトALDH2変異型遺伝子(ALDH2*2)に置換した遺伝子組み換えマウス(ALDH2*1またはALDH2*2ノックインマウス)を作成した。マウス作成時に同時に組み込まれた薬剤耐性遺伝子はCAG-Creマウスとの掛け合わせにより除去した。こうして完成したALDH2*1またはALDH2*2ノックインマウスを、それぞれ掛け合わせ、ALDH2*1/*1マウス、ALDH2*1/*2マウス、ALDH2*2/*2マウスの3群のマウスを作成した。これらのマウス群の肝ALDH2活性を測定したところ、ALDH2*1/*1>ALDH2*1/*2>ALDH2*2/*2となり、合理的なデータが得られた。これらのマウスに10%エタノールを7日間自由摂取させた後、食道組織を採取し、DNAを抽出してLC/MS/MS法にてDNAアダクト(N2-ethylidene-dG)値を測定したところ、ALDH2*1/*1<ALDH2*1/*2, ALDH2*2/*2となった。さらに、ALDH2*1/*1マウス、ALDH2*1/*2マウス、ALDH2*2/*2マウスの3群のマウスにAlda-1を20mg/kg body weight)で腹腔内投与し、3時間後に肝ALDH2を測定したところ、ALDH2*1/*2マウス、ALDH2*2/*2マウスのALDH2活性はALDH2*1/*1マウスと同等にまで回復していた。現在、ALDH2*1/*1マウス、ALDH2*1/*2マウス、ALDH2*2/*2マウスの3群に10%エタノールを7日間自由摂取の上、Alda-1治療を行い、食道組織中DNAアダクトレベルを検討中である。
2: おおむね順調に進展している
計画書に記載した内容に従い、マウスモデルを完成させ、遺伝子変異している個体における飲酒の影響、食道DNA傷害について概ね順調な結果が出ており、また、ALDH2活性増強剤についても良好なALDH2活性増強効果を確認できている。
今後は、計画書に記載の通り、変異型ALDH2ノックインマウスおよびそのコントロールマウスに飲酒、およびAlda-1の投与を行い、食道に生じるDNA傷害の改善効果をN2-ethylidene-dG値測定による定量と、γーH2AXの免疫染色により検討する。また、Alda-1と逆の効果を持つ、ALDH2抑制剤のcyanamideを用いて、ALDH2抑制によるDNA傷害の増強効果についても検討を行う予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
International Journal of Molecular Sciences.
巻: 18 ページ: 1943
10.3390/ijms18091943
J Exp Clin Cancer Res.
巻: 36 ページ: 101
10.1186/s13046-017-0572-7.
Clin Transl Gastroenterol.
巻: 8 ページ: e96
10.1038/ctg.2017.24.