研究課題/領域番号 |
16K09282
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
木下 芳一 島根大学, 医学部, 教授 (30243306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 内科 / 消化器 / 細菌 / アレルギー・ぜんそく |
研究実績の概要 |
好酸球性食道炎例と好酸球性胃腸炎例の口腔内と消化管内の細菌叢が健常者とどのように異なっており、それが疾患発症にどのように関係しているかを明らかとすることを目的として研究を行っている。本年度は好酸球性食道炎例と胃腸炎例の血清のTh2型のサイトカインを中心に約50種類のサイトカイン、ケモカインの測定を行った。また、これらの疾患のヘリコバクター・ピロリ感染の有病率を健常コントロールと比較する検討も行った。ヘリコバクター・ピロリ感染の陽性率は好酸球性食道炎、抗酸球性胃腸炎ともに健常者に比べて有意差を持って低く、ヘリコバクタ―・ピロリ感染は好酸球性消化管疾患への罹患率を低下させることが明確となった。一方、血清中のサイトカイン、ケモカインの濃度は好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎例と健常者の間に重なりが大きく、これらの血清中濃度の測定を持って診断の補助としたり、病勢のマーカーとすることは困難であると考えられた。 大腸内の細菌が産生する水素とメタンの濃度の測定が可能であるかの検討を開始しており、健常者においても好酸球性食道炎患者においても測定が可能であることが明らかとなった。これらの腸内細菌が産生するガス成分は腸管の運動能に大きく影響することが知られており、多数例での測定と健常者との比較が重要であると考えられる。口腔内細菌と消化管内細菌に関してはサンプルの採取方法を工夫し、安定してサンプルを採取することができるように採取用のサンプリングチューブを開発した。さらに、これを用いて健常者10例において口腔内の細菌と消化管内の細菌叢の解析が可能であることを確認した。さらに、好酸球性食道炎患者が長期内服していることが多いプロトンポンプ阻害薬が口腔内と消化管内の細菌叢に対してどのような影響を及ぼしているかを検討し興味ある成績を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎、そして健常者例を対象として唾液中、血清タンパク、サイトカインの測定、便中の腸内細菌の産生物の測定、口腔内と消化管内の各部位における細菌叢の解析を行って、これらを比較することで好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎の病態を明らかとし、病因を究明することを目的としている。現在までの検討で血清タンパクとサイトカイン類、唾液中タンパク、腸内細菌が産生するガス状物質の測定は全て確立し健常者と好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎例での測定を開始している。さらに、細菌叢の解析は消化管内の解析も口腔内の細菌叢の解析も確立し、さらに健常者を対象として薬剤投薬の影響の検討が終了した。薬剤の投薬の影響を検討することは好酸球性食道炎例が高頻度にプロトンポンプ阻害薬を長期使用していることを考えると非常に重要な情報が得られたこととなる。 さらに、好酸球性食道炎例と好酸球性胃腸炎例の口腔内と消化管内の細菌叢解析のためのサンプルの収集は予定どうりに進んでいる。 このような研究の進行状況から本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在約100例の好酸球性食道炎例を外来で経過観察している。これらの例が診療上必要で上部消化管の内視鏡検査を受検するときに合わせて口腔内と消化管内の細菌叢の解析のためのサンプルを現在の採取方法と同様に採取していく。サンプルの検体数が十分な数になった時点でまとめて細菌叢の解析を行う。好酸球性胃腸炎に関しては症例数が多くない疾患であるため まだ十分な患者数を確保できていない そこで患者を確保するべく関連の病院、診療所の医師に疾患の説明を協力依頼を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は健常者の細菌叢の解析は行ったが、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎例に関してはサンプルの収集が随時行われているため まとめた解析を行うのにまだ十分なサンプル数を確保できなかった。このため サンプルの解析が行われておらず、細菌叢解析に必要な費用が次年度への繰り越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には解析を行うのに十分な数のサンプル数となることが期待されるため 次年度に細菌叢の解析のための費用として使用を予定している。
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