研究課題/領域番号 |
16K09285
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
井戸川 雅史 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00404749)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | lncRNA / p53 / ChIP-seq / 癌 / 転写因子 / non-coding RNA |
研究実績の概要 |
癌の約半数で変異が認められる癌抑制遺伝子であるp53の標的長鎖非コードRNA(long non-coding RNA, lncRNA)を探索するために, FLAGタグのついた正常型p53および癌において高頻度に認められる8種類の変異型p53を発現するアデノウイルスベクターを用いて,p53欠失の癌細胞H1299に対して過剰発現させ,抗FLAG抗体によるクロマチン免疫沈降後,沈降産物の次世代シーケンサー解析(ChIP-seq)を行った.その結果,正常型p53では多数の結合ピークを認めたが,変異型p53においては,ほとんどピークを認めなかった.変異型p53が変異によって新規機能を獲得し通常とは違う結合パターンを示すことを想定したが,DNA結合領域に変異を持つものが多く,今回の実験系では結合自体がほとんど検出できなかった.そこで,正常型p53発現によるmRNA発現の変化を次世代シーケンサーによるmRNA発現解析(RNA-seq)により定量した.更にp53正常型であるU2OS細胞を,p53を分解するMDM2を阻害する薬剤であるNutlin-3aで処理し,内因性のp53を活性化させた系でもChIP-seq,RNA-seqを行った.その結果,U2OSとH1299細胞でそれぞれ,4205,4726のlncRNAが2倍以上の発現上昇を認めた.更にChIP-seqのデータと比較したところ,U2OSで2倍以上発現上昇を認めたlncRNAのうち1194(28.4%),H1299では371(10.0%)において,lncRNA遺伝子近傍にp53の結合が認められた.このうち,両者に共通のものが96あり,特にp53の直接標的lncRNAである可能性が高いと考えられた.これらの中で,NEAT1というlncRNAに着目して,更に解析を進めているところである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,研究が進んでいるため.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,研究計画に従って研究を進めていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内の共通機器の利用などによって,受託解析費用や消耗品の購入が抑えられたため. 次年度,研究計画通りに進捗しなかった際に使用する予定である.
|