研究課題
癌の約半数で変異が認められる癌抑制遺伝子,p53の転写標的となる長鎖非コードRNA(long non-coding RNA, lncRNA)を探索するために,p53欠失の癌細胞に対してp53を過剰発現させた系,および正常型p53を持つ癌細胞にNutlin-3a処理を行い内因性p53を活性化した系において,p53のクロマチン免疫沈降産物の次世代シーケンサー解析(ChIP-seq)を行った.その結果,両者で共通して2倍以上発現上昇を認め,かつ遺伝子近傍にp53の結合が認められるlncRNAが96あり,その中でNEAT1というlncRNAに着目して解析を進めた.ChIP-seqでは,NEAT1遺伝子の転写開始点上流約1500bpにp53結合を示すピークを認め,その領域に重なるp53結合モチーフを認めた.その部分の配列を用いたレポーターアッセイでは,p53による転写活性の上昇が引き起こされた.p53正常型の3種類の癌細胞にNutlin-3a処理を行い内因性p53を活性化したところ,定量PCRでNEAT1の発現が強く誘導されることが判明した,また,p53活性化時にNEAT1をノックダウンしたところ,p53によって引き起こされる増殖抑制が減弱した.その際の遺伝子発現をRNA-seqを用いて網羅的に解析したところ,NEAT1のノックダウンにより特定の遺伝子群の発現変化が認められた.また,NEAT1の発現と予後の関係について,大腸癌を含む3つのデータセットにおいて解析を行ったところ,NEAT1の低発現が予後不良と相関していた.以上の結果から,p53によるNEAT1の発現誘導がp53の腫瘍抑制に寄与すると共に,p53とNEAT1が複雑な転写ネットワークを形成していることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,研究が進んでいるため.
これまでの研究結果を論文にまとめるとともに,学会等で発表を行う.
学内の共通機器の使用により,受託解析費用や消耗品費が抑えられたため.これまでの研究成果を論文にするための追加実験費用,投稿掲載料,および成果の学会発表のための旅費等に使用する予定である.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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巻: 40 ページ: 0
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