研究課題
胃GISTにおける免疫チェックポイント機構の中心的分子を同定するために19例の胃GIST症例の腫瘍組織を免疫組織化学により解析し、免疫担当細胞の浸潤の有無と程度、代表的な免疫チェックポイント分子の発現につき検討を行った。19例全例にCD8+細胞障害性T細胞 (CTL) の浸潤、19例中8例にCD56+ natural killer (NK) 細胞の浸潤が認められ、CTLとNK細胞の浸潤程度には強い相関が見られた。浸潤したCTL,NK細胞はいずれもCD69陰性、programmed cell death-1 (PD-1) 陰性で活性化状態ではなかった。T cell immunoglobulin and mucine protein 3 (Tim-3)は8例中6例のNK細胞に陽性であったが、CTLでは全例で陰性であった。一方、Tim-3のligandであるgalectin-9の胃GIST腫瘍における発現を検討すると、19例中13例がgalectin-9陽性であった。NK細胞のTim-3発現と腫瘍組織のgalectin-9発現の相関を検討すると、8例のTim-3+NK細胞浸潤陽性例のうち6例に腫瘍組織のgalectin-9の発現が認められた。以上より、胃GIST腫瘍組織においては、免疫チェックポイント機構としてTim-3/Galectin-9を介したNK細胞の活性化抑制状態が存在することが示唆された。PD-1のligandであるprogrammed cell death ligand-1 (PD-L1)の腫瘍組織における発現解析は本年度の研究では施行されていないが、胃GIST組織内に浸潤しているCTLやNK細胞にPD-1の発現を認めないことから、PD-1/PD-L1をaxisとした免疫チェックポイント機構が胃GISTにおける免疫抑制に関与している可能性は低いと思われる。
2: おおむね順調に進展している
19例の胃GIST症例を対象としてpreliminaryな検討を行い、一定の傾向を示す結果が得られた。今後は症例数を追加してこの傾向を確認すると同時に、本年度には検討できなかった新たな免疫チェックポイント関連分子の胃GISTにおける発現につき解析を行う予定である。
胃GIST症例の腫瘍組織における免疫チェックポイント関連分子の発現の解析を継続し、同疾患において中心的な役割を演じている免疫チェックポイント関連分子を明らかにしていく。その分子が同定されたらin vitroの実験系を用いてGIST細胞における免疫チェックポイントligand分子の発現制御機構を明らかにし、その抑制剤の探索を行う。現在は免疫チェックポイント分子のreceptorとligandの結合を防止するためにモノクローナル抗体製剤が使用されて効果を上げているが、高価な抗体製剤を使用するために医療経済に悪影響を与えつつある。GIST細胞に発現する中心的な免疫チェックポイントligand分子が明らかになれば、この分子の発現の制御機構を解明することにより抗体製剤に依存しない低分子化合物を使用した免疫チェックポイント阻害療法を施行できる可能性が高まる。
特になし。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Cancer Immunol Immunother.
巻: 65 ページ: 1499-1509