糖尿病が胃癌、大腸癌の罹患率や悪性度に影響するメカニズムを明らかにするため、糖尿病で増加するO-GlcNAc修飾との関わりを検討した。 大腸癌については、大腸癌の化学発癌モデルであるDMH/DSSモデルを用い、野生型とO-GlcNAc転移酵素高発現マウス(OgtーTg)の発癌状況を比較検討した。その結果、OgtーTgでは消化管上皮において有意に癌化した腫瘍形成の数が減少した。そのメカニズムを追究し、炎症のマスター遺伝子であるNF-κBのO-GlcNAc修飾が増加することにより、リン酸化が 起こりにくくなり、活性化しないため、発癌に絡む炎症が抑えられ発癌が抑制されることを証明した(Hirata et al J Clin Biochem Nutr.)。 胃癌においては、MKN45という胃癌細胞株を用いて、FOX-M1という胃癌発症、増殖に関与している転写因子に注目して研究を行った。O-GlcNAc修飾がFOX-M1の発現に影響すると考え研究を進めた結果、O-GlcNAc修飾がFOXM1の転写を亢進しているのではなく分解を抑制していることが分かった。そこで、FOXM1の分解に関わっているGSK3βとFBXL2に注目して実験を進めた。その結果、GSK3βがO-GlcNAc修飾を受けることによりFOXM1のユビキチン化が抑制され安定化させていることを見出した(Inoue et al BBRC).さらに、FBXL2もO-GlcNAc修飾されることによりFOXM1のユビキチン化が抑制され、FOXM1が安定化することを見出した(論文準備中)。これらのことより、O-GlcNAc修飾はFOXM1のユビキチン化に関する少なくとも2分子に対して起こり、FOXM1を安定化させ胃がんの増殖性や悪性度に影響することが判明した。
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