研究課題
食道ー胃接合部に生じる癌は、胃癌とも食道癌とも異なる特徴を有していることが知られている。接合部癌はヘリコバクター・ピロリ菌の除菌や、高脂肪高カロリーの西洋食摂取に伴う肥満の増加に並行して本邦でも増加しているが、その病態ならびに発生の分子メカニズムの詳細は解明されていない。本年度は、網羅的遺伝子発現解析、エピゲノム解析(DNAメチル化解析)結果より見出された、デスモソーム関連分子periplakinの発現およびプロモーター領域のDNAメチル化について、接合部癌切除検体を用いて検討を行った。リアルタイム定量PCR法および抗体を用いた免疫組織染色法により、多検体の接合部癌切除標本を用いてperiplakin発現について検証した結果、非癌部粘膜と比較して癌部で有意な発現低下が認められた。バレット腺癌と比べて非バレット接合部癌でperiplakin発現は低い傾向が認められたが、有意差はなかった。パイロシークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法によるDNAメチル化解析では、食道ー胃接合部癌におけるperiplakin遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化頻度は、非癌部粘膜と比較して有意に高かった。食道ー胃接合部癌におけるperiplakin発現におけるDNAメチル化の関与を明らかにするため、ヒト接合部癌OE19細胞およびバレット腺癌OE33細胞をDNAメチル化阻害剤5-aza-2'-deoxycytidine処理した結果、periplakin遺伝子発現が有意に亢進した。以上の結果より、胃ー食道接合部癌においては、プロモーター領域のDNAメチル化亢進によりperiplakin遺伝子の発現が抑制されている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
順調に症例を蓄積し、網羅的解析で見出した分子について多検体で検証を行うことができた。食道ー胃接合部癌を更にバレット腺癌と非バレット腺癌に分類して統計解析を行うためには症例数が不足しているので、今後は後ろ向き解析も合わせて行う予定である。
網羅的解析で見出した分子について、順次、定量PCR法、抗体を用いた組織染色ならびにウエスタンブロット解析、パイロシークエンスによるDNAメチル化解析を行い、多検体を用いた検証を進めると共に、臨床病理学的諸症状との関連について検討する。後ろ向き症例の解析も開始し、見出した分子が食道ー胃接合部領域における発癌の診断・予知マーカーに成り得るか、バレット腺癌と非バレット接合部癌との違いも含めて検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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