研究課題
走査型電子顕微鏡を用いてのラットにおける小腸絨毛基底膜の窓について、摂食による変化を中心に観察を行った。高脂肪食の負荷によりまず窓を介する自由細胞の通過が多くなり、その後窓面積の増大がみられたことから、食餌と免疫応答とが関与していること、脂肪の吸収においてこの窓が調節的役割を果た引き続きしている可能性が示唆された。今後は透過型電子顕微鏡を用いてこの自由細胞を同定することで、窓の調整のメカニズムと肥満との関連を解明することが可能であると考え、研究を発展させる予定である。一方2018年度は、ヒトでの小腸絨毛基底膜の窓の検討を引き続き行った。現在までに11名25検体を採取し、窓と、窓を通過する自由細胞の観察を行っている。絨毛の形態は、ラットとは異なりバリエーションがあることが分かり、その意義と、個人差の有無について現在解析を継続している。また、拡大小腸内視鏡を用いて小腸絨毛の観察を行った。原発性リンパ管拡張症における絨毛の変化を内視鏡的に観察し、生検組織像を健常者と対比したところ、同患者にみられる白色絨毛は、リンパ管の形成障害に伴う絨毛内リンパ管(乳糜管)の拡張と、細胞内にたまったカイロミクロンを反映していると考えられた。このことから、特に肥満者でみられる十二指腸絨毛の白色変化は、カイロミクロンが基底膜の窓を通過し、中心乳糜管に移動するまでの経路の何らかの障害を反映していると推察された。つまりこの経路に、肥満者と健常者との間で違いがある可能性が想定され、さらに検討を行っていく予定である。また、ヒト肥満をマウスで再現できるMCR4受容体ノックアウトマウスに高脂肪食を負荷し肥満を誘発した後、基底膜の窓の評価を行った。同マウスにおいても窓は同定可能であったが、今回使用したマウスでは、高脂肪食摂取の有無で、窓に変化はみられなかった。今後はラットおよびヒトでの検討が必要と考えられた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Biomedical Research
巻: 40 ページ: 57~66
10.2220/biomedres.40.57
Digestive Diseases
巻: 37 ページ: 170~174
10.1159/000493578
Internal Medicine
巻: 58 ページ: 655~659
10.2169/internalmedicine