研究実績の概要 |
金沢大学と研究協力施設の倫理審査委員会の承認を得て既に採取され、保有している大腸鋸歯状病変のパラフィン包埋ホルマリン固定(FFPE)標本、計78検体を対象とし、解析を行った。従来、鋸歯状病変で変異が報告されている遺伝子であるAPC, TP53, KRAS, BRAF, RNF43などに加えて、大腸進行癌で変異が報告されているWntシグナル経路関連遺伝子であるCTNNB1, AXIN2, DKK1-4, FAM123B, ARID1A, TCF7L2, SOX9などを含む変異解析パネルを作成し、DNA抽出後、次世代シーケンサーを用いて変異解析を行った。また、CIMPマーカー(MINT1, MINT2, MINT12, MINT31, MLH1, CDKN2A)や他の癌関連遺伝子(SFRP1, SFRP2, IGFBP7, SOX5, GALNT14)のメチル化の定量的解析をパイロシーケンス法によって行った。さらに、一部の検体において、Wntシグナル経路の亢進を反映するとされるβカテニンの免疫組織化学を行った。 その結果、無茎性鋸歯状腺腫(SSA)と比較し、鋸歯状腺腫(TSA)ではWntシグナル関連分子の遺伝子変異とSMOC1遺伝子メチル化が高頻度にみられ、SSAとは異なるTSA独自の発癌経路が存在すると考えられた。また、TSAにはBRAF変異陽性のものとKRAS変異陽性のものとが存在するが、RNF43変異はBRAF変異陽性TSAに、SMOC1遺伝子メチル化はKRAS変異陽性TSAに多く、TSAにおいても複数の発癌機構が存在することが示唆された。 結果は2018年の日本癌学会学術総会、日本消化器関連学会週間(JDDW2018)、欧州消化器病週間(UEGW2018)で発表し、現在論文作成中である。
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