研究課題/領域番号 |
16K09306
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 和博 名古屋大学, 医学部, 招へい教員 (60432275)
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研究分担者 |
後藤 秀実 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10215501) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炎症 / 腸炎 / サイトカイン / ケモカイン / primary fibroblasts |
研究実績の概要 |
生薬ソウジュツの成分であるAtractylodinが有するinterleukin-6 (IL-6)産生抑制作用、その作用の分子機序および腸炎発症に対する抗炎症効果について論文を執筆し査読がある国際雑誌に投稿していたが、雑誌の査読者が要求するminor revisionに対応した結果、論文は受理されて公表することができた。 これまで研究で使用しているprimary fibroblastsは広く利用されているlipid-based reagentsによる遺伝子導入が困難であったが、これを容易かつ著明に改善する方法を開発することができた。この成果についても論文を執筆し、査読がある国際雑誌に投稿した。その後、要求されたminor revisionに対応した結果、論文は受理されて公表することができた。 腸炎の発症に重要な炎症性サイトカインであるmacrophage migration inhibitory factor (MIF)による刺激下、primary fibroblastsにおいて発現が亢進する遺伝子をmicroarray assayにより網羅的に解析した結果、ケモカインであるmonocyte chemotactic protein-1 (MCP-1)の発現が最も亢進することがわかった。 生薬ゴミシの成分であるWuweizisu Cについて次のことを解明することができた:1.MIFだけでなく様々な刺激(tumor necrosis factor-alpha・lipopolysaccharide・lipoteichoic acid)の下でprimary fibroblastsにおけるMCP-1産生を濃度依存的に抑制する。 2.MCP-1産生抑制作用を発揮する濃度から8倍超えてもprimary fibroblastsに対して細胞毒性を示すことはない。 3.MIFやtumor necrosis factor-alphaの刺激によりMCP-1発現に重要な転写因子であるNF-kappaBが活性化するが、この活性化を抑制する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Atractylodinの薬理作用・抗炎症効果に関する論文およびprimary fibroblastsの遺伝子導入方法改善に関する論文いずれも査読を有する国際雑誌で受理されて公表することができた。 MCP-1の発現こそが炎症性サイトカインMIF刺激下のprimary fibroblastsで最も亢進することを確認できた。 Wuweizisu CのMCP-1産生抑制作用は様々な刺激により活性化したprimary fibroblastsにおいて認めらる一方で、その細胞毒性は極めて低いことを確認できた。更に、Wuweizisu CのMCP-1産生抑制作用を分子レベルで解析する研究も計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Wuweizisu CのMCP-1産生抑制作用を分子レベルで解析する研究を計画通りに進める。 Wuweizisu Cの抗炎症効果をマウスの腸炎モデルなどで検証する。 簡易かつ再現性が高いマウスの慢性腸炎モデルの開発も行う。 サイトカイン・ケモカイン産生抑制作用を示す天然化合物のスクリーニングもこれまで通り進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究がほぼ実験計画通り順調に進み、想定外の事態が生じた場合に行うはずであった実験を行わずに済んだ。また、論文を投稿した雑誌の査読者から要求されたrevisionがminorであったため、追加で行った実験が想定していたほど多くはなかった。以上の理由により次年度使用額が391,131円となった。 (使用計画) この次年度使用額(391,131円)を用いてサイトカイン・ケモカイン産生を制御する天然化合物のスクリーニングをより一層進めていく予定である。また、天然化合物の抗炎症効果の検証に有用な新しいマウス慢性腸炎モデルの開発も行う予定である。
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