大腸炎関連大腸癌において重要な役割を担うマクロファージ(Mφ)にはCC chemokine receptor 2 (CCR2)陽性でmonocyte chemoattractant protein-1に反応して末梢血から傷害大腸に侵入する炎症性MφとCX3 chemokine receptor 1 (CX3CR1)陽性でfractalkineに反応して炎症部位に移動する組織常在Mφが存在する。大腸炎および腫瘍形成における両者の役割を明らかにするために、2種類のケモカイン受容体CCR2およびCX3CR1の欠損マウスとwild-type (WT) のC57BL/6-Ly5.2マウスの骨髄細胞を10 Gy放射線照射したC57BL/6J-Ly5.1マウスに移植して骨髄キメラマウスを作成した。移植2ヶ月後にazoxymethane (AOM)を腹腔内投与し、その1週間後からdextran sodium sulfate (DSS)を3サイクル投与した。 3サイクル投与終了9日目にCCR2欠損骨髄キメラマウスとWT骨髄キメラマウスから摘出した大腸を比較すると、前者は後者に比し、(1)炎症部位への単球および線維細胞の浸潤が著明に減少し、(2)これらが産生するtissue inhibitor of metalloproteinase 1も有意に減少し、(3)type 1 collagenの分解亢進により大腸線維化が抑制されていた。 3サイクル投与終了10週時点ではCCR2欠損骨髄キメラマウス、CX3CR1欠損骨髄キメラマウスともにWT骨髄キメラマウスに比し、大腸線維化は軽減し、大腸腫瘍数も減少していた。CX3CR1欠損マウスではAOM/DSS傷害後の大腸炎が重症化し腫瘍数が増加するとの報告があるが、我々の結果は正反対であった。今後、炎症下でのCX3CR1陽性単球系細胞の機能を詳細に検討する。
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