研究課題/領域番号 |
16K09309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 敦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (20569610)
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研究分担者 |
奥野 恭史 京都大学, 医学研究科, 教授 (20283666)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 「Hypermutated type」大腸癌 |
研究実績の概要 |
公開データベースであるThe Cancer Genome Atlas (TCGA)に蓄積されたゲノムデータを用いて「Hypermutated type」結腸癌を(1)ミスマッチ修復蛋白の異常を示すMicrosatellite-high (MSI-H)癌 (2)POLE/POLD1遺伝子変異を示す癌 (3)上記以外 の3群に分けて解析したところ、(1)(2)(3)では異なる遺伝子変異のパターンを示すことが明らかとなった。また2016年以降に京都大学医学部附属病院において手術あるいは内視鏡切除を施行された大腸癌の組織を用いてミスマッチ修復蛋白の発現を検討したところ、MLH1の異常を示した病変が4.5%で、MSH2、MSH6、PMS2の異常を認めた病変が1.9%であり、合わせて6.4%が上記の(1)にあたる病変と考えられた。従来はMLH1の異常を示す大腸癌の多くはBRAF V600E変異陽性の鋸歯状ポリープに由来すると考えられてきたが、今回の我々の検討ではMLH1の異常を示す大腸癌の37.5%がBRAF V600E変異陰性であり、MLH1発現消失を示す一群の大腸癌も分子変化の面から均一な集団ではないと考えられた。以上からMSI-Hやミスマッチ修復蛋白の異常、POLE/POLD1遺伝子変異、BRAF遺伝子変異に基づいて「Hypermutated type」大腸癌をさらに細分類したうえで、それぞれのsubtypeの特徴を考慮に入れてバイオマーカーを開発する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TCGAデータの解析により「Hypermutated type」大腸癌の中にMSI-H癌とPOLE/POLD1遺伝子変異陽性癌に加えて機序不明なその他のsubtypeが存在していることが示唆された。また京大病院の臨床検体でミスマッチ修復蛋白やBRAF V600E変異の検討を行うことにより、大腸癌症例の中から「Hypermutated type」のひとつのsubtypeであるMSI-H癌を同定することが可能であった。前向き症例の集積が困難であったため進捗がやや遅れているが、予定を変更して過去の症例を後ろ向きに解析してMSI-H大腸癌や多発大腸ポリープ症例を集積しており、検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ミスマッチ修復蛋白の検討により同定したMSI-H大腸癌に加えて、次世代シークエンサーにより10-20個以上の多発ポリープ症例の腫瘍組織を解析することでPOLE/POLD1遺伝子変異陽性の「Hypermutated type」大腸癌を同定し、これらの大腸癌組織を使用して、バイオマーカーの探索を進めていく予定である。
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