公開データベースであるThe Cancer Genome Atlas (TCGA)に蓄積されたゲノムデータを用いて「Hypermutated type」結腸癌を(1)ミスマッチ修復蛋白の異常を示すMicrosatellite-high (MSI-H)癌 (2)POLE/POLD1遺伝子変異を示す癌 (3)上記以外 の3群に分けて解析したところ、(1)(2)(3)では異なる遺伝子変異のパターンを示すことが明らかとなった。 また2016年から2018年の期間中に京都大学医学部附属病院において手術あるいは内視鏡切除を施行された大腸癌の組織を用いてミスマッチ修復蛋白の発現を検討したところ、MLH1の異常を示した病変が5.4%で、MSH2、MSH6、PMS2の異常を認めた病変が2.1%であり、合わせて7.5%がdeficient Mismatch Repair(dMMR)を示し上記の(1)にあたる病変と考えられた。従来はMLH1の異常を示す大腸癌の多くはBRAF V600E変異陽性の鋸歯状ポリープに由来すると考えられてきたが、今回の我々の検討ではMLH1の異常を示す大腸癌の1/3以上がBRAF V600E変異陰性と考えられ、MLH1発現消失を示す一群の大腸癌も分子変化の面から均一な集団ではないと考えられた。 「Hypermutated type」大腸癌をさらに細分類してその分子変化の特徴を検討するために、APCやAXIN2などのWntシグナル系に関与する遺伝子、MSH2やMLH1、POLE、POLD1などのDNA修復や校正に関与する遺伝子などを含む遺伝子パネルを作成し、上記のdMMRを示した大腸癌を対象として次世代シークエンサーを用いて遺伝子変異解析を行った。その結果、「Hypermutated type」大腸癌における多様な遺伝子変異の特徴が明らかとなった。
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