研究課題
本研究では、原因不明の難治性疾患である炎症性腸疾患に対する糖鎖を介した炎症制御を目指し、糖鎖変化による腸炎発症・増悪および腸炎関連癌と腸内細菌叢との関連について検討を行ってきた。特に、腸管の免疫担当細胞および上皮細胞の糖鎖変化や、糖鎖に結合する蛋白質であるレクチンが腸炎や腸炎関連癌に及ぼす影響について、糖鎖改変モデルマウスや各種腸炎マウスモデル等を用いた検討を行うことを目的として研究を行った。また、これら成果の臨床応用を目指して、糖鎖変化が炎症性腸疾患患者の疾患予後に与える影響や腸炎関連癌発症との関連について明らかにすることを目的とした。炎症性腸疾患患者の血清や糞便の糖鎖や脂質に関連した解析を行い、ポリラクトサミン構造に親和性の高いレクチンであるGalectin-1に着目して、その先天免疫系を介した腸炎改善作用について実験腸炎モデルやマウス由来免疫担当細胞を用いた解析をおこなった。その結果、Galectin-1刺激によりマクロファージから抗炎症性サイトカインが産生されることを見出すとともに、Galectin-1で刺激したマクロファージを免疫不全マウスに移入すると腸炎モデルが改善することが明らかとなった。炎症性腸疾患患者の内視鏡時における生検検体や手術検体を用いて、腸管炎症局所におけるGalectin-1の発現を見たところ、炎症の強い部分で免疫担当細胞におけるGalectin-1の発現が低下していることが明らかとなった。これらの結果より、糖鎖認識レクチンであるGalectin-1がマクロファージの抗炎症性サイトカイン産生を介して腸炎制御に関わる可能性が考えられた。
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J Biochem.
巻: 165(3) ページ: 227-37
10.1093/jb/mvy098.