研究課題/領域番号 |
16K09316
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
芦塚 伸也 宮崎大学, 医学部, 助教 (90468033)
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研究分担者 |
稲垣 匡子 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (70363588)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アドレノメデュリン / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 |
研究実績の概要 |
本研究は、アドレノメデュリン(AM)を用いた炎症性腸疾患の新規治療方法の開発研究における補完的研究であり、①腸炎モデル動物に対するAM皮下投与の有効性の検討 (基礎研究)、②AM療法の再燃予防・寛解維持効果に関する検討 (基礎研究)、③消化器疾患(炎症性疾患、悪性疾患)患者におけるAMの病理学的意義 (基礎・臨床研究)、④腸炎関連腫瘍モデル動物に対するAM投与の影響 (基礎研究)、⑤クローン病患者に対するAM療法の治療効果に関する検討 (臨床研究)の5つの研究を進めている。本年度はこれらのうち、主に①、③、⑤に関して研究を進めた。 ①DSS大腸炎モデルマウスに、0, 5, 25, 125 nmol/kgのnative AMを連日皮下投与し、Day 7に評価した(各群10匹)。炎症スコア(便形状、血便、%体重減少)、大腸長さ、大腸重量、血漿中AMを評価した。結果は、いずれの評価項目においても統計学的有意差を認めず、有効血漿濃度を保つ時間が短すぎる可能性が示唆された。 ③消化器疾患患者330名の血中AM濃度(total AM, mature AM)を測定した。消化管疾患の内訳は、炎症性腸疾患 38名(潰瘍性大腸炎 9名、クローン病 25名、他)、早期消化器腫瘍 64名、進行消化器腫瘍 195名、消化管出血 21名、他。測定値(未公表)。 ⑤ [症例] 30歳台、男性。infliximab(IFX)療法二次無効、ステロイド依存性クローン病患者に対し、IFXにAM療法(反復持続静注、7日間)を併用した。AM投与後、血便と下痢、腹痛の改善傾向を認め、2週目の内視鏡検査で大腸縦走潰瘍が再生粘膜で覆われ、潰瘍瘢痕も認めた。7週目の内視鏡評価では潰瘍がほぼ瘢痕化しており、AM療法併用前の所見と比べ明らかな粘膜治癒が認められ、クローン病IFX二次無効症例へのAM治療効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①腸炎モデル動物に対するAM皮下投与の有効性の検討(基礎研究)、②AM療法の再燃予防・寛解維持効果に関する検討(基礎研究)、③消化器疾患(炎症性疾患、悪性疾患)患者におけるAMの病理学的意義 (基礎・臨床研究)、④腸炎関連腫瘍モデル動物に対するAM投与の影響(基礎研究)、⑤クローン病患者に対するAM療法の治療効果に関する検討(臨床研究) 基礎研究①、②、④、⑤に関し、DSS腸炎モデル作成に使用する薬剤(DSS)が製剤会社により精度調整が行われ、物質特性に影響が生じ、腸炎発症が不安定になってしまった。このため、腸炎モデル作成段階からの再調整を余儀なくされており、今後も計画に遅れを生じる可能性が高い。 臨床研究②に関しては、臨床情報情報量が非常に多いため、データの整理と解析に時間を要する。 臨床研究③に関しては、昨年から今年にかけて新薬が保険承認され、通常診療で使用できる治療選択肢が増えたこともあり、症例集積が難しくなると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究に関しては、腸炎モデルの安定化、他のモデルの検討を進める。
臨床研究に関しては、②AMの病理学的意義に関しては今年度データ解析を進める。③クローン病患者に対するAM療法(探索的試験)については、生物学的製剤二次無効患者を対象に集患を進める。
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