本研究は、アドレノメデュリン(AM)を用いた炎症性腸疾患の新規治療方法の開発研究における補完的研究であり、①腸炎モデル動物に対するAM皮下投与の有効性の検討(基礎研究)、②AM療法の再燃予防・寛解維持効果に関する検討(基礎研究)、③消化器疾患(炎症性疾患、悪性疾患)患者におけるAMの病理学的意義(基礎・臨床研究)、④腸炎関連腫瘍モデル動物に対するAM投与の影響(基礎研究)、⑤クローン病患者に対するAM療法の治療効果に関する検討(臨床研究)の5つの研究を計画した。 【結果】①、②:DSS誘導型腸炎マウスに対しAM 1μgを毎日1回1週間皮下投与した結果、腸炎が抑制され、c-fos発現増加、杯細胞の回復、Klf4の発現増強が認められ、AMがc-fosの発現を促進し、抗炎症作用に働くと同時に、杯細胞の誘導を促すことにより粘膜修復にも有効であることが示唆された。次に、60kDa-PEG化ヒトAM(60k-PEGhAM)が皮下投与後約10日間有効血中濃度を保つ事を確認した。60k-PEGhAMはDSS腸炎マウスに対する単回皮下注射にて抗大腸炎効果を示すことが確認された。PEG化hAM皮下投与を用いた臨床応用が期待できる。③炎症性腸疾患患者88名のAM血中濃度を測定した。健診受診者を対照群とし、AM濃度と臨床背景の関係を検討したところ、IBD群のAM濃度は対照群に比し有意に高値であった。また、臨床活動性が高い(重症)ほどAM濃度が高い傾向が認められた。血中AM濃度はIBD患者における新たなバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。④本研究に関しては、人的・経済的理由により研究が進められなかった。⑤インフリキシマブ療法二次無効を示すクローン病患者に対するAM投与の著効例を経験した。本結果をもとに、2018年4月よりクローン病を対象とするAM療法の医師主導治験が開始できた。
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