研究課題
Genome-wide association study (GWAS) の隆盛により,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease IBD)の疾患感受性遺伝子は163にも及ぶ.しかし,同定された遺伝子の多くは,オッズ比が小さく,クローン病の遺伝素因のおよそ20%を説明し得るに過ぎない.欧米人と日本人の疾患感受性遺伝子には驚くべき相違が認められるが,これまで日本人IBDに関するGWAS は4試験のみであり,さらに,われわれが施行したメタ解析で再現性を認めた日本人に特有な SNPはごくわずかであった.このことから、個々のIBD患者発症に関連する遺伝子を同定するためには、家系内での遺伝子解析、あるいは細胞に機能変化を生じさせるエピゲノム変化をとらえる必要があると考えている。こうした現状を踏まえ,まず我々は、日本人IBDの小家系におけるパーソナルゲノミクスを解析にとりくんできた. これまでの研究手法を用いて,数家系のトリオおよび罹患同胞対のexome解析を行い,日本人に特有なIBD関連 single nucleotide variant (SNV)を同定することを試みてきた。我々はすでに3家系(IBD患者)の解析を終了した。一家系については、Th2サイトカイン(IL-5, IL-13)発現に関連するプロモーター領域の遺伝子多型が認められた。他の家系ではIL-1 betaの発現に関連するプロモーター領域の遺伝子多型が認められた。しかしながら、これらの希少変異の再現性を検討するためには,多数の症例の集積が極めて重要である.したがって、共同研究施設でのさらなる症例集積が必要である。
2: おおむね順調に進展している
解析対象は,数家系のIBD小家系であり,最大でも一家系 4人構成として,5家系計 20人までのexomeシークエンス解析を予定している家系内の健常者を含め全員を対象とする. 今回、研究施設での症例集積に係る倫理委員会,ゲノム委員会の承認をえることができた。まず、潰瘍性大腸炎患者家系の遺伝子解析に取り組んだ。現在、3家系の解析が終了した。その結果、潰瘍性大腸炎患者家系において、IL-5, IL-13遺伝子プロモーター領域の一塩基多型が認められた。また、他の家系では、IL-1 betaの発現に関連するプロモーター領域の遺伝子多型が認められた
平成29年度内に,解析対象の選別や共同研究施設での倫理委員会,IRBの手続きがほぼ終了した.われわれは,すでに本研究内容と極めて類似した予備的検討を研究論文として報告(参考文献 1. PLoS One 2015;10:e0137801)した.本年度は、さらなる研究成果を積み重ねることにより、IBDの原因究明に関してPersonal genomicsの重要性を検討する。
次年度使用額が生じた理由については、受益者負担金にかかる費用がが予想よりも安価であったためである。翌年度分として、引き続き遺伝子解析費用ならびに受益者負担金として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件)
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