研究課題/領域番号 |
16K09320
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
谷田 諭史 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30528782)
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研究分担者 |
日吉 裕美 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10406530) [辞退]
前川 大志 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (10771917)
城 卓志 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30231369)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 消化器がん / PD-L1 / Cullin 3 / 細胞内膜輸送 |
研究実績の概要 |
近年、がん細胞膜蛋白質であるprogrammed death-ligand(PD-L)1とT細胞膜に発現するprogrammed death(PD)との結合が、T細胞の細胞傷害作用を抑制することにより、がんの免疫逃避機序に重要な役割を果たす。本件中ではCullin3(CUL3)-BTB結合タンパク質(BTBP)が programmed death-ligand(PD-L)1の発現制御に関与するメカニズムを解明することを目的としており、当該年度は、前年度に引き続き「細胞内膜輸送を制御するCUL3のパートナーBTBPの同定」について研究を行った。 細胞内膜輸送の制御の検討を行うにあたり、細胞内膜輸送経路を可視化する系の構築を試みた。蛍光標識したタンパク質マーカーを用いることにより、細胞内膜輸送経路の可視化による解析が可能となる。各種消化器がん細胞株において細胞内膜輸送経路を可視化する系を構築することができた。次に、この系を用いて、CUL3遺伝子のノックダウンにより細胞内膜輸送経路に影響が出るかについて検討を行った。細胞内膜輸送経路には、①小胞体からゴルジ体を経て細胞膜へ輸送される順行性輸送、②細胞膜からゴルジ体まで輸送される逆行性輸送、③細胞膜からエンドソームを経てライソゾームへ輸送される分解経路、④細胞膜からエンドソームを介して細胞膜へ戻るリサイクル経路の4経路が存在する。各経路はマーカーによって識別することができる。また、CUL3遺伝子のノックダウン後、各消化器癌細胞の核、細胞質、細胞膜成分をフラクション化抽出し、PD-L1の細胞構成成分各領域での発現の有無、発現量をウェスタン解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、各種消化器癌細胞株において細胞内膜輸送経路を可視化する系を構築することが可能となった。次に、PD-L1の輸送を制御する基質タンパク質の同定を行う。これは、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ変異体(APEX2)を用いた生細胞でのin vivoビオチン標識法により実施しているが、PD-L1の輸送を制御する基質タンパク質の同定およびCUL3遺伝子との関連機能解析に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
CUL3依存的な細胞内輸送小胞でのPD-L1蛋白質輸送システムの解析 PD-L1を蛍光(MFP)標識した発現プラスミドを作製し、CUL3、BTBP、基質のそれぞれの薬剤誘導型microRNAレンチウイルスベクター感染各種消化器がん細胞株に一過性発現させる。テトラサイクリン処理時と無処置時での輸送小胞を可視化する。輸送経路の可視化による解析は、マーカーとして、GFP-VSVG (順行性輸送マーカー)、蛍光標識されたコレラ毒素 (逆行性輸送マーカー)、蛍光標識されたEGF (分解経路マーカー)、蛍光標識されたtransferrin (リサイクル経路マーカー)を用い、共焦点顕微鏡 (ニコンA1-R)にて解析する。各遺伝子発現抑制細胞で異常を示す細胞内膜輸送経路を見出した後は、microRNA耐性の各遺伝子を発現させて、各遺伝子の依存性を証明する。また、その輸送経路の特異的な阻害剤処理を用いて、PD-L1細胞内膜輸送が抑制される事を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) PD-L1を蛍光(MFP)標識した発現プラスミドを作製および、CUL3、BTBP、基質のそれぞれの薬剤誘導型microRNAレンチウイルスベクターの作製することを次年度実施の計画としたため。 (使用計画) PD-L1を蛍光(MFP)標識した発現プラスミドを作製し、CUL3、BTBP、基質のそれぞれの薬剤誘導型microRNAレンチウイルスベクターにて各種消化器がん細胞株に一過性発現させ、輸送小胞を可視化する。CUL3依存的な細胞内輸送小胞でのPD-L1蛋白質輸送システムの解析を進める
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