研究課題
これまでに HO-1(heme oxygenase-1)/CO(carbon monoxide:一酸化炭素) 系の腸管炎症病態における役割について継続的に検討を行っている。腸管炎症病態におけるHO-1の炎症抑制効果について、HO-1阻害剤にて腸管炎症病態が悪化すること、Bach1欠損マウス(高HO-1発現マウス)では腸管炎症が軽減されることを確認し、HO-1は主に腸管粘膜固有層のマクロファージに発現し腸管炎症病態を制御することを見出し、J Clin Biochem Nutr.誌に論文投稿を行いAcceptされた。また、昨年度から引き続きCO(carbon monoxide:一酸化炭素)によるリンパ球分化における影響の検討を行い、CO遊離剤により転写因子RORc発現が制御され、Th17が選択的に分化制御されることを明らかにした。さらに、in vivoモデルでの検証としてナイーブCD4+T細胞移入腸炎モデルを用いた検討を行い、CO投与によりTh17リンパ球分化制御を介して腸管炎症が制御されることを明らかにした。この検討に関しても、Free Radic Res. 誌に投稿を行いAcceptされた。これらの結果はHO-1を高発現する抗原提示細胞(マクロファージ)が一酸化炭素を介してリンパ球分化を制御する可能性を示すものであり、一酸化炭素を介したサイトカインと同様の免疫担当細胞間のコミュニケーションが存在する可能性を示すことが出来た。一方、当初計画に掲げた「局所制御型CO 遊離剤として亜硫酸ナトリウムコーティングCO 遊離剤による腸炎治療効果」についても検討は順調に進捗し、前年度に英文誌発表に至っており、COを介した腸内環境制御に関しての検討について、腸内細菌叢を標的に解析に着手した。
2: おおむね順調に進展している
Heme oxygease-1を介した腸管炎症制御に関して順調に進捗し、英文論文発表に至った。また、COによる腸管炎症制御機構に関してもTh17リンパ球分化制御機構の存在を明らかにし、英文論文発表に至っており、概ね順調に進捗していると考えられた。
本年度はBach1欠損マウス(高HO-1発現マウス)を用いた検討を予定通り推進していく。具体的にはBach1欠損マウス(高HO-1発現マウス)では野生型マウスに比較してTNBS惹起性腸炎が軽減されるが、両マウスを共飼育すると野生型マウスの腸炎程度がBach1欠損マウス(高HO-1発現マウス)の腸炎程度まで改善することを明らかにしており、腸内細菌を含めた腸内環境における解析を進めていく。また、無菌マウスにBach1欠損マウス(高HO-1発現マウス)、もしくは、野生型マウス由来糞便を移植し腸炎発症進展を検証する。一方、CO(carbon monoxide:一酸化炭素)の臨床応用に関して、安全性が担保された高濃度の局所投与を達成するための製剤開拓に取り組む。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
Free Radic Res
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/10715762.2018.1470327
J Clin Biochem Nutr.
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