研究課題
本研究は,遺伝子ネットワーク摂動による人工的な転移性大腸癌の作製を目的とする.近年は化学療法の進歩にもかかわらず,転移性大腸癌の生命予後は依然として悪い.ヒトオルガノイドへの既知のドライバー遺伝子変異の導入により人工大腸癌の作製が試みられてきたが,浸潤・転移をきたす大腸癌の形成には至っていない.本研究は大腸発癌におけるエピジェネティクスな変化の関与を想定し,その転移因子群を同定することで大腸発癌機構の解明,創薬に結びつけることを目的とする.具体的には,当研究室が保有する大腸癌と正常大腸上皮のデータベースを用いて想定される転写因子を抽出し,正常大腸上皮か らの遺伝子ネットワーク摂動による悪性転化を試みる.
2: おおむね順調に進展している
昨年度,人工的遺伝子変異を導入した大腸正常上皮の悪性化機序の解明にあたり,私たちは当研究室が保有する55ラインの大腸癌オルガノイドの遺伝子変異データ,マイクロアレイデータより複数の転写因子を抽出した.本年度はその作成した因子を人工遺伝子変異導入オルガノイドに導入し,その悪性化への寄与につき前方視的に検討を行った.転写因子を導入したオルガノイドをマウスの肝転移アッセイに用いたが,結果的に転移は認められず,現行の転写因子では不十分と結論付けた.
今後は当研究室の大腸癌オルガノイドライブラリーの更なる解析を進め,正常大腸上皮と大腸癌オルガノイドの差を更に明確にする.以前と比較して大腸オルガノイドラインの数も増加しているため,よりrobustな転写因子の抽出を行い,大腸癌の再現を試みる.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Cell Stem Cell.
巻: 22 ページ: 454-467
10.1016/j.stem.2017.12.009.
巻: 22 ページ: 171-176
10.1016/j.stem.2017.11.012.