研究実績の概要 |
本研究では、小腸のD-アミノ酸代謝の鍵となるD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の発現調節機構を明らかにするとともに、DAOの宿主粘膜免疫への寄与について明らかにすることが目的である。 昨年度までに、DAOの発現調節は細菌成分が最初の引き金となることを明らかにし、また宿主内ではMyD88やRIPK2を介さない所謂一般的なパターン認識機構を介さない機構で誘導が起こっていることを明らかにした。 本年度は、DAOは2つの方法で宿主免疫に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。1.腸内細菌制御を通してT細胞依存的に宿主の獲得免疫に作用すること、2.腸内細菌制御とは独立して、T細胞非依存的にDAOによる代謝物を介して宿主の獲得免疫に作用すること、である。これらのことは、DAO欠損マウスをT細胞受容体beta, deltaの二重欠損マウスと交配させ、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスを作成することで達成した。T細胞受容体beta, delta二重欠損マウスと、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスの腸管免疫細胞の表現型比較を行ったところ、DAO欠損マウスで認めた獲得免疫異常の表現型の90%は、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスで消失したものの、10%の表現型はT細胞受容体非依存的であることが明らかとなった。10%の表現型は、DAO代謝物が未感作のB細胞に直接作用して認めたものと考えている。
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