研究実績の概要 |
我々の新しい抗菌剤併用FMTのプロトコルでは高い治療効果を示し、腸内細菌叢の効率的な定着が治療効果と関連することを明らかにした。UC患者92例(A-FMT療法55例、AFM単独37例)の短期治療効果の評価では、A-FMT療法はAFM療法と比較し治療効果率と寛解導入率が高いことが明らかとなり(A-FMT療法65.9%/40.4%, AFM単独56.3%/18.8%)、従来のFMTの報告と比べて極めて高い治療効果が認められた。腸内細菌叢の解析では、AFM療法後にはBacteroidetesの割合が著明に減少したが、FMT後4週間に治療有効例ではBacteroidetesが有意に回復し、無効例では回復を示さなかった。一方、抗菌剤療法(AFM単独)群では、治療後4週間経過してもBacteroidetesは十分に回復せず、治療効果と関連性も認めなかった。以上からBacteroidetesの変化がA-FMTの治療効果に強く関与していることが示された(Ishikawa D, et al. Inflamm Bowel Dis. 2017)。 そこで、平成30年度の研究業績として、keyであるBacteroidetesに注目し、Bacteroidetesの種レベルの網羅的解析を行った。治療効果のあった症例では特定の菌種の移植が可視化され、種レベルでの多様性が改善しドナーの腸内細菌組成に近似していることを報告した(Ishikawa D, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018) 。これはAFM療法による抗生剤前処置治療が、ドナーの腸内細菌の効率的な移植に関与し、有効例では実際に移植、定着していることを世界で初めて証明したものであった。
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