5-FU耐性に関与するmicroRNAの探索と機能解析をおこなった。まず、低濃度から徐々に5-FUに暴露し、大腸癌培養細胞株DLD-1とSW480の5-FU耐性株DLD/FとSW/Fを、DLD-1担癌ヌードマウスに5-FUを腹腔内投与することで親株のmDLDcと5-FU耐性株mDLD/F1とmDLD/F2を樹立した。これらの細胞株を用いてmiRNAアレイ解析を行い、5-FU耐性に関与するmicroRNAを同定し、miRNA導入実験により機能解析を行った。また大腸腫瘍90症例を用いてmiRNAの発現を検討した。 miRNAアレイ解析により12種類の5-FU耐性に関与するmiRNAを同定した。その内、耐性株で過剰発現するmiR-31について検討した。DLD-1の5FU耐性株にinhibitor-miR-31を導入すると細胞増殖数は変化しなかったが、5-FUを投与すると細胞増殖能が約25%抑制された。一方、DLD-1細胞にmimic miR-31を導入すると細胞増殖能は約10%抑制されたが、5-FU耐性となった。また癌のエネルギー代謝(Warburg効果)を制御するFIH-1の発現が抑制された。臨床検体では腺腫や粘膜癌と比べて粘膜下層以深に浸潤する癌で有意にmiR-31が過剰発現していた(P<0.001)。さらに、このmiR-31は鋸歯状腺腫でも高頻度に発現が増加していた。 これらの成果を日本癌学会、日本消化器病学会、米国消化器病学会の総会で報告した。更に論文執筆も行い、現在Cancer Science誌に投稿中(Title: Induced miR-31 by 5-FU exposure contributes to the resistance in colorectal tumors、2019年1月に投稿)であり、Reviceを投稿しての結果待ちとなっている。
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