研究課題/領域番号 |
16K09330
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
福井 寿朗 関西医科大学, 医学部, 講師 (60402905)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大腸腫瘍モデルマウス / 腫瘍幹細胞 / 腫瘍化 / 深部浸潤 / 脈管侵襲 / 転移 |
研究実績の概要 |
・5週齢の雄ICRマウスにAOMを腹腔内投与し、1週後からDSSを7日間自由飲水させた。実験開始2,4,6週後(短期モデル)と30週後(長期モデル)に大腸検体を採取した。検体はパラフィン包埋用ホルマリン固定標本・凍結切片用未固定凍結標本・遺伝子検索用凍結標本と血清とした。 ・解剖時肉眼所見及び、HE標本を作製し解析したところ、実験開始2週後では大腸腫瘍性病変が全く存在せず、6週後では完成した大腸上皮内癌が認められたため、短期モデルとしては実験開始3-4週のモデルを採用し、腫瘍化早期の微小病変形成のメカニズムを解析することとした。30週後の長期モデルでは病変の粘膜下層以下への深部浸潤と脈管内への浸潤を多く確認した。短期モデルの微小病変の観察により、このモデルにおける腫瘍性病変の発生部位は上皮上方でありこの部位に腫瘍幹細胞の存在が推測された。 ・未染標本を作製し、pSmad2/3L-Thr・Ki67・CDK4に対する抗体を用いて蛍光二重免疫染色を施行し、微小病変(粘膜下層浸潤部・脈管内病変部は現在解析中)にKi67陰性、CDK4強陽性のpSmad2/3L-Thr強陽性細胞を確認できた。蛍光免疫染色後切片をHE染色し、腫瘍内のpSmad2/3L-Thr強陽性細胞を確認し未熟な腫瘍細胞であることが推測された。 ・微小病変はKi67・βカテニン(主に細胞質)・cyclinD1・Sox9がいずれも陽性であった。これらより腫瘍化した早期病変であることを確認できた。微小病変周囲にβカテニン陰性・cyclinD1陽性の部位が認められ、この部位にも着目し今後さらに解析する。 ・微小病変内pSmad2/3L-Thr強陽性細胞はβカテニン陽性の腫瘍細胞であった。さらに他のマーカーと共に解析し腫瘍幹細胞としての可能性を検討していく。長期モデルでは腫瘍幹細胞の検索、腫瘍浸潤・転移のメカニズムも解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・腫瘍化早期モデル(短期モデル)の作成方法を確定することができた。 ・短期モデルの微小病変周囲に、さらに早期の腫瘍性変化を疑う部位が認められた。当初解析を計画していた病変よりも、さらに早期の腫瘍化メカニズムを解析できる可能性が生まれた。 ・長期モデルは完成したばかりであるが、粘膜下層や脈管内への浸潤・侵襲も比較的多く認められ、今後検討を要する課題と考えられた。これにより、当初の計画通り実験開始30週後のモデルを長期モデルと確定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・短期モデルの病変をさらに詳細に検討し、このモデルにおける腫瘍化メカニズムの解析、pSmad2/3L-Thr強陽性細胞の腫瘍幹細胞マーカーとしての可能性を検討する。これまで考えられて来た腫瘍化メカニズム以外のメカニズムが隠されている可能性があることを念頭におく。 ・長期モデルにおいては腫瘍進展のメカニズムを中心に検討予定である。腫瘍主病変周囲の腫瘍細胞のbudding、EMT(上皮間葉転換)、深部・脈管浸潤を中心に検討し、腫瘍幹細胞を含めた腫瘍進展メカニズムを解析することにより転移の予防につながる足がかりにしたいと考えている。
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