研究課題/領域番号 |
16K09331
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
光山 慶一 久留米大学, 医学部, 教授 (20200066)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 / 腸内細菌 / インターロイキン6 |
研究実績の概要 |
近年、潰瘍性大腸炎患者の急増とともに、潰瘍性大腸炎長期経過例に合併する大腸癌が増加傾向にあり、その対策が急務である。潰瘍性大腸炎の癌化メカニズムはまだ不明だが、腸内細菌と粘膜免疫の相互作用が密接に関与している可能性が示唆されている。腸内細菌の病態への関与を検討するには糞便中での腸内細菌叢の解析だけでは不十分で、腸粘膜に存在する粘膜付随細菌叢を解析する必要がある。本研究では、潰瘍性大腸炎の癌化メカニズムを明らかにする目的で、粘膜付随細菌叢とインターロイキン6 トランスシグナリングとの関連について検討する。 初年度である今年度は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)とLMD-16S遺伝子メタゲノム解析法の2種類の手法を用いて、潰瘍性大腸炎の癌化に関与する粘膜付随細菌叢の検討を行った。その結果、潰瘍性大腸炎患者の腸粘膜には、多数の粘膜付随細菌叢が存在することが明らかとなってきた。今後、粘膜付随細菌叢を構成する細菌種の同定を行うとともに、その他の腸疾患との比較を行い、潰瘍性大腸炎の癌化に関連する菌種を同定するとともに、インターロイキン6 トランスシグナリングの関連因子(IL-6受容体、gp130、インターロイキン6、STAT3、腫瘍壊死因子変換酵素 等)との関連も検討し、潰瘍性大腸炎の癌化のメカニズムを解明していきたい。本研究によって、腸粘膜内に棲息する細菌による免疫細胞でのインターロイキン6 トランスシグナリングの活性化が潰瘍性大腸炎の癌化に関与していることが明らかになれば、潰瘍性大腸炎の癌化予防や治療へとつながっていくことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潰瘍性大腸炎からの発癌には、腸内細菌と粘膜免疫との相互作用の関与が示唆されている。腸内細菌の病態への関与を検討するには糞便中での腸内細菌叢の解析だけでは不十分で、腸粘膜に存在する粘膜付随細菌叢を解析する必要がある。 本研究では、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜での粘膜付随細菌叢の解析と、インターロイキン6 トランスシグナリングの解析を行い、粘膜付随細菌叢によるインターロイキン6 トランスシグナリングの活性化と発癌の関連について検討を行う。初年度である今年度の目標は、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜での粘膜付随細菌叢を解析することである。今回は蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)とLMD-16S遺伝子メタゲノム解析法の2種類の手法を用いて、粘膜付随細菌叢の構成の解析を行った。 まず、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法を用いて、ヒト潰瘍性大腸炎のホルマリン固定パラフィン包埋標本を使用した検討を行った。Eub338プローブ(全細菌を認識)を用いて検討すると、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜では多くの腸内細菌を認めることが明らかとなった。 つぎに、LMD-16S遺伝子メタゲノム解析法を用いて、マウスモデル大腸組織とヒト潰瘍性大腸炎組織の両者を使用して検討を行った。まずマウスモデルの大腸組織においては、凍結組織標本だけでなく、ホルマリン固定パラフィン包埋標本での粘膜付随細菌叢の解析が可能となった。現在、同様の手技を用いてヒト潰瘍性大腸炎での粘膜付随細菌叢の解析を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜での粘膜付随細菌叢の解析と、インターロイキン6 トランスシグナリングの解析を行い、粘膜付随細菌叢によるインターロイキン6 トランスシグナリングの活性化と発癌の関連について検討を行う。初年度である今年度の目標は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)とLMD-16S遺伝子メタゲノム解析法の2種類の手法を用いて、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の粘膜付随細菌叢の構成の解析を行った。 蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法では、Eub338プローブ(全細菌を認識)を用いた検討で潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜では多くの腸内細菌を認めることが明らかとなった。今後は、各種腸内細菌プローブを用いて検討を行っていくとともに、潰瘍性大腸炎組織、通常大腸癌組織、通常大腸癌の非癌部組織、その他の腸炎組織などを用いた検討も行い、潰瘍性大腸炎合併癌の粘膜付随細菌叢との比較を行う予定である。 LMD-16S遺伝子メタゲノム解析法については、今年度にマウスモデルのホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて確立させた粘膜付随細菌叢の解析手技を用いて、ヒト潰瘍性大腸炎での粘膜付随細菌叢の解析をさらに進め、潰瘍性大腸炎組織、通常大腸癌組織、通常大腸癌の非癌部組織、その他の腸炎組織などを用いた検討も行い、潰瘍性大腸炎合併癌の粘膜付随細菌叢との比較を行う予定である。 さらに、インターロイキン6 トランスシグナリングの関連因子(IL-6受容体、gp130、インターロイキン6、STAT3、腫瘍壊死因子変換酵素 等)との関連も検討し、潰瘍性大腸炎の癌化のメカニズムを解明していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である今年度の目標は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)とLMD-16S遺伝子メタゲノム解析法の2種類の手法を用いて、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の粘膜付随細菌叢の構成の解析を行うことであった。蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法を用いた検討は順調に進み、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌粘膜では多くの腸内細菌を認めることが明らかとなった。LMD-16S遺伝子メタゲノム解析法を用いた検討は、最初に実施したマウスモデルの大腸組織での検討では、凍結組織標本だけでなく、ホルマリン固定パラフィン包埋標本での粘膜付随細菌叢の解析が可能となった。一方、ヒトホルマリン固定パラフィン包埋標本での粘膜付随細菌叢の解析法を確立するのに予想以上の時間を費やした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、マウス大腸のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本で取得した解析手技を用いて、以下の方法でヒトFFPE標本での粘膜付随細菌叢解析法を確立する。 LMD装置を用いたFFPE組織切片からの組織分離とDNA抽出法:脱パラフィン後、FFPE組織切片からLMD装置を用いて粘膜組織を切り出し、adhesiveCap 500 clear チューブを用いて回収する。単離した組織からDNAを抽出し、DNA濃度の測定を行なう。細菌16S DNA遺伝子増幅の確認:抽出DNA 1ngを鋳型として、細菌16S rDNA遺伝子全長並びにV4領域の遺伝子増幅をPCR法で実施する。V4領域の遺伝子増幅をリアルタイムPCR法で検出する。FFPE標本と凍結組織標本との比較:FFPE組織切片と凍結組織切片から調製したDNAを用いた細菌16S rDNA遺伝子メタゲノム解析結果を比較する。
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