研究課題
近年、潰瘍性大腸炎患者の急増とともに、潰瘍性大腸炎長期経過例に合併する大腸癌が増加傾向にあり、その対策が急務である。潰瘍性大腸炎の癌化メカニズムはまだ不明だが、腸内細菌と粘膜免疫の相互作用が密接に関与している可能性が示唆されている。腸内細菌の病態への関与を検討するには糞便中での腸内細菌叢の解析だけでは不十分で、腸粘膜に存在する粘膜付随細菌叢を解析する必要がある。本研究では、潰瘍性大腸炎の癌化メカニズムを明らかにする目的で、粘膜付随細菌叢とインターロイキン6 トランスシグナリングとの関連について検討する。1年目は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)とLMD-16S遺伝子メタゲノム解析法の2種類の手法を用いて、潰瘍性大腸炎の癌化に関与する粘膜付随細菌叢の検討を行った。その結果、潰瘍性大腸炎患者の腸粘膜には、多数の粘膜付随細菌叢が存在することを明らかにした。2年目は、大腸癌やクローン病での粘膜付随細菌叢を検討し潰瘍性大腸炎との比較を行うとともに、インターロイキン6 トランスシグナリングの関連因子(IL-6受容体、gp130、インターロイキン6、STAT3、腫瘍壊死因子変換酵素 等)との関連を検討した。3年目である今年度は、潰瘍性大腸癌合併大腸癌およびsporadic大腸癌での粘膜付随細菌叢の検討を行うとともに、インターロイキン6 トランスシグナリングの関連因子との関連を検討した。その結果、潰瘍性大腸癌合併大腸癌でのインターロイキン6 トランスシグナリングの活性化が明らかとなった。本研究によって、腸粘膜内に棲息する細菌による免疫細胞でのインターロイキン6 トランスシグナリングの活性化が潰瘍性大腸炎の癌化に関与していることが示唆され、潰瘍性大腸炎の癌化予防や治療へとつながっていくことが期待される。
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