研究課題
本研究課題はがん関連遺伝子の活性型変異を標的とした化合物複合体(ピロールイミダゾール含有ポリアミドにビオチンを付加修飾した複合体を用いて、がん患者を対象に、その血液サンプルに含まれる無細胞遊離DNA(cfDNA)から腫瘍由来の標的がん遺伝子の変異部位を含むDNA断片(ctDNA)を特異的に超濃縮することで高感度遺伝子型診断法の確立を目指すものである。当該年度においては、患者サンプルを用いる前のプロトコール作成に注力した。すでにPIポリアミドによる特異的結合が報告されているKRASの活性型変異をモデルとして用いた。ビオチン化PIポリアミドをKRAS2(WT)、KRAS4(12Cおよび12S)、KRAS5(12Vおよび12D)の3種類設計・合成した。次にKRAS野生型アレルおよび4つのKRAS遺伝子変異(G12V, G12D, G12S, G12C)アレルのコンストラクトを作製し、PCRの鋳型として用いた。またアレルの検出にはKRASマルチプレックススクリーニングキットによるddPCR法により実施した。まずは、それぞれのビオチン化PIポリアミドによる標的アレルの回収率を算出した結果、KRAS2はWTアレルに対して90.2%、KRAS4は12Cに対して93.7%、12Sに対しては56.2%であった。またKRAS5は12Vおよび12Dともに10%以下の回収率であったため、再設計を予定している。KRAS4が回収率が最も高かったことから12Cをターゲットとし、スパイク実験を実施した。健常者由来の全血およびKRAS野生型ホモであるHT29細胞株からgDNAを抽出し、そこへプラスミド由来12Cアレルをスパイクさせ、KRAS4による免疫沈降プルダウンを実験を行った。12C変異アレルの存在比を算出した結果、コントロール群に比べ、3~5倍の12C変異アレルの存在比向上に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度においては、化合物の設計・合成、プロトコールの作成、検出系の立ち上げなどに注力し、おおむね計画通りに進行している。申請者の所属する研究施設には化合物生成のシステムがすでに立ち上がっており、今後より加速して実験が進展することが期待できる。
今後の研究推進方策として、大腸がん患者に最も多い、KRAS変異12Vおよび12Dを特異的に認識する新規PIポリアミドの再合成を推進するとともに、プラスミドDNAおよび細胞株の基礎データから実際の患者サンプルに適応するプロトコール作成に取り組む。併せて、保存患者血清サンプルからのDNA抽出法および、KRAS変異アレルの検出法の検討などを実施する予定である。
当該年度においては、実験系の立ち上げに注力したこともあり、学会等の旅費が掛からなかったため。
次年度の物品費に充てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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