PIPポリアミドを用いた血中循環腫瘍DNA濃縮による高感度遺伝子型判定法の開発

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K09333
• 研究機関: 千葉県がんセンター(研究所)
• 研究代表者: 傳田 忠道 千葉県がんセンター(研究所), 消化器内科, 部長 (90466053)
• 研究分担者: 渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究員 (60526060) ; 奥村 和弘 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 腫瘍ゲノム研究室, 研究員 (80584680) ; 永瀬 浩喜 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究所長 (90322073)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: リキッドバイオプシー / ピロールイミダゾール含有ポリアミド / KRAS / 大腸がん

研究実績の概要

本研究課題はがん関連遺伝子の活性型変異を標的とした化合物複合体（ピロールイミダゾール含有ポリアミドにビオチンを付加修飾した複合体：PIP-biotin）を用いて、がん患者を対象に、その血液サンプルに含まれる無細胞遊離DNA（cfDNA）から腫瘍由来の標的がん遺伝子の変異部位を含むDNA断片（ctDNA）を特異的に超濃縮することで高感度遺伝子診断法の確立を目指すものである。当該年度においては実際の大腸がん患者（21例）の保存血清中のcfDNAを対象に、PIP-biotinによるKRASの遺伝子型の判定を試みた。患者背景は、StageI/II/III/IV：2/2/6/11であった。ddPCRによる変異アレルの検出感度は、StageIV症例では濃縮前・後ともに81.8%(9/11)と同等であった。一方、StageI～IIIの症例では濃縮前の検出感度10%(1/10)であったのに対して、濃縮後では80%(8/10)と、有意に検出感度が向上した(p＜0.01)。これらの結果から、PIP-biotinを用い標的遺伝子を濃縮することで、血液中KRAS変異アレルの検出感度が向上することが確認された。特にcfDNA量の少ないStageI～IIIの症例で有効であったことから、早期診断や再発のモニター等に応用できる可能がある。今後は、患者サンプルの増加、他のがん腫および他のがん遺伝子への応用を検討している。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度においては、昨年度までに確立した検出系を含むプロトコールを用いて、実際の患者サンプルを用いた実験に注力した。その結果、本濃縮法が有効であることが示された。今後は、患者サンプルの増加、他のがん腫および他のがん遺伝子への応用を検討している。

今後の研究の推進方策

当該年度においては、昨年度までに確立した検出系を含むプロトコールを用いて、実際の患者サンプルを用いた実験結果から、大腸がん患者に最も割合の多いKRAS変異12Vおよび12Dを特異的に認識するPIP-biotinの有用性が示された。一方、KRAS変異12Cおよび12Sについてはプラスミドを用いた検証実験では有効性が示されているものの、該当する大腸がん患者サンプル数が少ないのが現状である。今後は、KRAS変異が多いがん腫、膵がんや肺がんなどの患者サンプルを用いることで、その有用性を検証したい。

次年度使用額が生じた理由

当該年度においては、患者サンプルを用いた実験が多くなったことに加え、それらの検出に注力したこともあり、学会等の旅費が掛からなかったため、次年度使用額が生じた。また使用計画としては物品費に充てる。

研究成果

• [雑誌論文] A phase II trial to evaluate the efficacy of panitumumab combined with fluorouracil-based chemotherapy for metastatic colorectal cancer: the PF trial. (2018)
  • 著者名/発表者名: Munemoto Y, Kanda M, Oba K, Kim HM, Takemoto H, Denda T, Nagata N, Takano N, Fukunaga M, Kataoka M, Tokunaga Y, Sakamoto J, Mishima H.
  • 雑誌名: Cancer Chemother Pharmacol. 巻: 81 ページ: 829-838
  • DOI: 10.1007/s00280-018-3556-1.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Propensity Score Analysis of Regorafenib Versus Trifluridine/Tipiracil in Patients with Metastatic Colorectal Cancer Refractory to Standard Chemotherapy (REGOTAS): A Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum Multicenter Observational Study. (2018)
  • 著者名/発表者名: Moriwaki T, Fukuoka S, Taniguchi H, Takashima A, Kumekawa Y, Kajiwara T, Yamazaki K, Esaki T, Makiyama C, Denda T, Satake H, Suto T, Sugimoto N, Enomoto M, Ishikawa T, Kashiwada T, Sugiyama M, Komatsu Y, Okuyama H, Baba E, Sakai D, Watanabe T, Tamura T, Yamashita K, Gosho M, Shimada Y.
  • 雑誌名: Oncologist. 巻: 23 ページ: 7-15
  • DOI: 10.1634/theoncologist.2017-0275.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Early morphological change for predicting outcome in metastatic colorectal cancer after regorafenib. (2017)
  • 著者名/発表者名: Arai H, Miyakawa K, Denda T, Mizukami T, Horie Y, Izawa N, Hirakawa M, Ogura T, Tsuda T, Sunakawa Y, Nakajima TE.
  • 雑誌名: Oncotarget. 巻: 8 ページ: 110530-110539
  • DOI: 10.18632/oncotarget.22807.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The subgroups of the phase III RECOURSE trial of trifluridine/tipiracil (TAS-102) versus placebo with best supportive care in patients with metastatic colorectal cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Van Cutsem E, Mayer RJ, Laurent S, Winkler R, Gravalos C, Benavides M, Longo-Munoz F, Portales F, Ciardiello F, Siena S, Yamaguchi K, Muro K, Denda T, Tsuji Y, Makris L, Loehrer P, Lenz HJ, Ohtsu A; RECOURSE Study Group.
  • 雑誌名: Eur J Cancer. 巻: 90 ページ: 63-72
  • DOI: 10.1016/j.ejca.2017.10.009.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] CEA Response and Depth of Response (DpR) to Predict Clinical Outcomes of First-Line Cetuximab Treatment for Metastatic Colorectal Cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Sunakawa Y, Tsuji A, Denda T, Segawa Y, Negoro Y, Shimada K, Kochi M, Nakamura M, Kotaka M, Tanioka H, Takagane A, Tani S, Yamaguchi T, Watanabe T, Takeuchi M, Fujii M, Ichikawa W.
  • 雑誌名: Target Oncol. 巻: 12 ページ: 787-794
  • DOI: doi: 10.1007/s11523-017-0527-0.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Cumulative incidence, risk factors and prognostic impact of venous thromboembolism in Japanese patients with advanced gastric cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Arai H, Hironaka S, Minashi K, Denda T, Shimokawa M, Yamaguchi T.
  • 雑誌名: Jpn J Clin Oncol. 巻: 47 ページ: 942-948
  • DOI: doi: 10.1093/jjco/hyx107.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Phase II study of S-1 plus leucovorin in patients with metastatic colorectal cancer: Regimen of 1 week on, 1 week off. (2017)
  • 著者名/発表者名: Li J, Xu R, Xu J, Denda T, Ikejiri K, Shen L, Toh Y, Shimada K, Kato T, Sakai K, Yamamoto M, Mishima H, Wang J, Baba H.
  • 雑誌名: Cancer Sci. 巻: 108 ページ: 2045-2051
  • DOI: 10.1111/cas.13335.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 血中微量二本鎖核酸分子を標的とした PI ポリアミドを用いたがん遺伝子変異同定法の開発と臨床応用の検討 (2017)
  • 著者名/発表者名: 北川善康、奥村和弘、鈴木拓人、渡部隆義、早田浩明、傳田忠道、永瀬浩喜、山口武人
  • 学会等名: 第26回日本癌病態治療研究会