研究課題
血液中には細胞が崩壊した際に放出される遊離DNA(cell-free DNA:cfDNA)が存在し、がん患者ではcfDNA以外にも腫瘍細胞由来の循環DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)が含まれる。近年、これらリキッドバイオプシーを用いた研究が盛んにおこなわれており、特にがん遺伝子の体細胞変異を高感度にキャプチャーすることによって、低侵襲かつ新たながん診断法の開発が進められている。KRAS遺伝子変異は大腸がんの約40%に認められる。そのため、ctDNAを用いてKRAS遺伝子変異を同定することは、がん診断の新たなバイオマーカーとして期待されている。そこで本研究ではKRAS遺伝子の変異配列に特異的に結合するピロールイミダゾール含有ポリアミド(PIポリアミド)にビオチンを付加した複合体を用いることで、cfDNA中の標的遺伝子を含む微量ctDNAを濃縮する技術を開発し、その臨床的有用性について検討した。患者血清サンプルはがん組織からKRAS 遺伝子変異型が同定されている大腸がん患者21例を用いた。これら保存血清からctDNAを抽出し、PIポリアミドにより変異アレルを濃縮した後にddPCRにより検出し、その感度をPIポリアミド濃縮前・後で比較した。患者背景およびがん組織KRAS変異型の比率は、それぞれステージⅠ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ:2/2/6/11およびG12C/G12S/ G12D/G12V:3/1/11/6であった。それぞれのKRAS変異に対応するそれぞれのPIポリアミドを使用し解析した結果、KRAS変異アレルの検出感度はステージⅣ症例では濃縮前・後ともに81.8%であった。一方、ステージⅠ/Ⅱ/Ⅲの早期の症例では濃縮前の検出感度は10%であったが、濃縮後では80%であり、有意に検出感度が向上した。これらのことから新たなctDNAの濃縮法の開発に成功した。
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