研究課題/領域番号 |
16K09337
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三浦 光一 秋田大学, 医学部, 特任講師 (90375238)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 肝癌 / 自然免疫 / Toll様受容体 |
研究実績の概要 |
本研究ではvitroではヒト肝癌細胞株Huh7細胞を用いて(実験計画1)、vivoにおいては肝細胞特異的PTEN KOマウス(以下PTEN KO)およびToll-like receptor関連分子のマウス(実験計画2)を用いて行っている。まず研究課題に示した、Huh7細胞からの肝癌幹細胞の分離では既報にあるようにEpCAM陽性Huh7細胞を分離することができた。興味深いことに、EpCAM陽性細胞はTLR4を発現し、TLR4リガンドであるLPS刺激に対し、肝癌のマーカーであるAFPの発現増強、肝癌幹細胞のマーカーであるNanog発現を増加させた。siRNAにてTLR4を阻害するとLPSによるAFPやNanog発現増強が減弱した。またTLR4の下流にあるNF-kBを阻害するとやはりAFPやNanog発現が減弱した。よってEpCAM陽性Huh7は癌幹細胞の性質を持ち、またTLR4リガンドLPS刺激により幹細胞機能を維持する可能性が示唆された。通常、癌幹細胞は抗がん剤に対して抵抗性を有することが知られている。Huh7細胞はシスプラチンで細胞死が誘導されことから、このEpCAM陽性Huh7細胞をLPSで刺激するとシスプラチンに対して抵抗性を示し、癌幹細胞の性質をさらに獲得した。このことはTLR4などの自然免疫機構が肝癌の進展に寄与している可能性があり、治療のターゲットとして有力な候補となりうる。 またPTEN KOマウスにおいて、癌の形成を注意深く観察すると、最初に前癌病変(adenma)が出現し、その中に肝癌が形成されることが多い。48週齢前後で前癌病変内に小型の腫瘍細胞が出現し、興味深いことにこれら小型の腫瘍細胞はTLR4, AFP, Nanogを発現する。これらの結果を踏まえ、2年目以降に計画している研究を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroにおけるHuh7細胞からのEpCAM陽性癌幹細胞の分離は既報の通り可能であった。興味深い事にこのEpCAM陽性Huh7細胞はTLR4を発現し、TLR4リガンド刺激で癌幹細胞の特性を維持できるデータを得られてつつある。今後は免疫不全マウスでの移植などの準備を進めていく。 またPTEN KOマウスにおいても前癌病変内にTLR4発現細胞を認め、Nanogをはじめとする癌幹細胞のマーカも発現していることが判明した。現在この細胞の分離およびcell line化を試みている。またHuh7のデータと平行し、PTEN KOマウスから採取予定の癌幹細胞の性質についても特定予定である。 1年目としてはほぼ予定に近い研究を行えたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
EpCAM陽性Huh7細胞が癌幹細胞の特性を有し、またTLR4リガンド刺激でstemnessの維持に寄与している可能性があることから、今後本研究のツールとして使用できると考えられる。今後はPTEN KOマウスから採取予定の癌幹細胞についてもその特性を予定通り進める計画である。Huh7およびPTEN KOマウスから採取した癌幹細胞を研究計画に示したように移植を試み、癌幹細胞に発現するTLR4が癌進展に寄与するのか、さらには治療ターゲットとして重要な分子となりうるのかを検討を進めていく。 またDENによる発癌がTLRや食餌により影響されのか(実験計画3)、またPTEN KOマウスでのプロバイオティクス実験(実験計画4)も開始した。
|