研究課題
劇症肝炎を含む急性肝不全は死亡率が高く、肝臓移植に代わる治療の開発が待たれているが、まだ、十分な効果のある治療法は開発されていない。細胞から放出される細胞外小胞であるExtracellular vesicles(EV) 内にはprotein、RNA、DNAなどが含まれており、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を持っていると考えられ、治療への応用も検討されている。本研究は、肝幹細胞や間葉系幹細胞由来のEVを用いた急性肝不全の治療の開発を目的とするものである。我々は、間葉系幹細胞および肝幹細胞のそれぞれの培養液かUltracentrifugation法にてExtracellular Vesicles(EV)の採取を行った。それらのEVはExosomeマーカーの発現を確認している。さらに、D-galactosamine+TNF-αを腹腔内投与した急性肝不全マウスモデルに間葉系幹細胞由来のEV(MSC-EV)、肝幹細胞由来のEV(HSC-EV)、PBS(コントロール)を尾静脈投与したところ、MSC-EVおよびHSC-EVともに肝酵素の改善を認め、さらに肝組織学的検討では肝壊死やアポトーシスの改善を認めた。In vitroのactinomycin D/TNFαの肝細胞障害モデルにおいては、MSC-EV中のY RNA-1 (lnc RNA)が肝細胞のviabilityの改善に寄与していた。また、MSC-EV中にはCXCL1 (mRNA)も多く含まれており、CXCL1は肝細胞の増殖能を上昇させた。さらに、MSC-EVは、肝虚血状態で上昇したROSとNFkBを低下させ、肝細胞のviabilityを保つ効果を示した。今後、さらなるEVの効果とメカニズムの解明が必要であるが、新たな治療法の開発につながる可能性がある。
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Journal of Viral Hepatitis
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10.1111/jvh.13099.