研究課題/領域番号 |
16K09341
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
徳山 宏丈 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (90385039)
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研究分担者 |
竹本 稔 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (60447307)
前澤 善朗 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (80436443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / NASH / 内皮細胞 / 分泌蛋白 |
研究実績の概要 |
本年度はSemaphorin 3G (Sema3G)ノックアウトマウスに高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAFHD)を負荷し、その肝臓における表現型を観察した。すると、野生型においては、CDAFHD負荷後に肝臓におけるSema3G発現が上昇する事が判明した。局在としてはIn Situ Hybridizationにより、肝細胞には認められず小葉間の動静脈に認められる事が分かった。更に、CDAFHD負荷後8週にてマウスを屠殺し、脂肪肝の程度を検討した。その結果、ASTはKO群で44%低下、γGTPも44%減少していた。ALT, コリンエステラーゼに有為な差は認められなかった。組織学的には、肝臓に沈着している脂肪滴のサイズに差は認められなかったが、一方でマッソントリクローム染色やシリウスレッッド染色により、野生型に比較してKOでは肝の線維化が軽減されている事が判明した。更に、肝臓における炎症性サイトカインの発現についてrealtime PCR法を用いて検討したところ、Sema3G KOマウスではTNF-α並びにIL-6の発現が有意に減少していた。線維化マーカーの発現についても検討したところ、一型コラーゲンの発現が33%低下していた。当初、Sema3Gは脂肪肝形成や肝線維化に抑制的に働くと仮想していたが、逆にSema3Gが欠損している方が肝の繊維化にはprotectiveに働く事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずSema3GKOマウスの交配は順調であり、また野生型マウスにおいてCDAHFD負荷によりSema3Gの発現上昇が認められており,この増加には何らかの生理的意義がある者と考えられる。また、結果は予想と異なるものの、KOマウスを用いた検討により、Sema3G が脂肪負荷に伴う肝線維化に促進的に働いている事が判明し、組織所見、遺伝子発現解析、また血清検査によりSema3GKOでは炎症,線維化が有意に抑制されるという所見が得られている。このように一定の量の生物学的に意義のあるデータが蓄積されているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今までに得られた所見に基づき、まず肝臓における炎症細胞の浸潤について、マクロファージマーカー、リンパ球マーカーを用いて染色を行ない、細胞浸潤の程度について観察する。また、Sema3Gは肝臓では小葉間同静脈に発現しているが、炎症性サイトカインが抑制されている事から血球の表現型を観察している可能性があり、CDAHFD負荷KOマウスに野生型骨髄を移植したときに炎症抑制の表現型が消失あるいは改善するか否かを検討する。あるいは野生型マウスにCDAHFDを負荷しKOの骨髄移植をする事も検討している。これにより、得られた表現型が血球に対するSema3Gの作用なのか、あるいは局所における作用なのかが明らかとなる。また、stellate cellをリポーターマウスで光らせる様なシステムを考案中であるので、これが出来ればstellalte cellを単離し遺伝子発現解析等に使用する。
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